【9月21日 AFP】米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを11月の大統領選までに実用化できるかもしれないと述べている。だがそのワクチンは安全かつ有効なのか?

 専門家らは、ワクチンの承認と流通プロセスの監督に責任を持つ世界的に有名な米保健機関が、政治的圧力によっていっそう妥協を強いられつつあり、人の命を犠牲にすることにもなりかねないと懸念している。

 問題の渦中にあるのは、米食品医薬品局(FDA)と米疾病対策センター(CDC)だ。歴史的に派閥対立を超越した存在とみなされてきたこの2つの機関は、世界の科学界から幅広い尊敬を集めてきた。

 だが両機関の専門家らは今、トランプ氏のトップ補佐官らから深い疑念の目で見られている。大統領が進める経済再開策に抵抗しているとみなされているのだ。

 これまで公衆衛生上の危機の際には定例会見を開いてきたCDCの上級科学者らは、今回の新型コロナウイルスに対しても最初に警鐘を鳴らしたが、3月以降は脇へ追いやられている。

 長らく世界基準とみなされてきたCDCの公式ガイドラインにこの夏、不可解な改訂があった。学校の対面授業再開を強く奨励するようになったこと、それからCOVID-19患者との接触者でも無症状であれば検査の必要はないと助言したことだ。

 特に後者の動きが言語道断とみられているのは、科学的根拠が何も示されていないことに加え、トランプ氏が発言している検査数を少なくしたいという意向に沿ったものだからだ。

 米政治ニュースサイト「ポリティコ(Politico)」の報道によると、米保健福祉省広報部門トップのマイケル・カプート(Michael Caputo)氏はここ数か月にわたって、CDCの「週間疾病率死亡率報告(Morbidity and Mortality Weekly Report)」に掲載された新型ウイルス関連の科学報告を見直すよう要求しているという。例えば子どもの接触感染性の水準についてなどだ。

 同報告の編集委員であるウィリアム・シャフナー(William Schaffner)氏はAFPの取材に「米国の政治指導層が、これらの機関の科学的機能を侵犯するのは前代未聞だ」と語った。