【9月27日 AFP】シェフのマーリン・ゼーダーシュトレーム(Malin Soderstrom)さん(51)が缶詰を開けると、小さな音とともに閉じ込められていた空気が広がり、レストランのバルコニーは強烈な臭いに包まれた。悪名高いスウェーデンの食材「シュールストレミング」だ。

 腐った卵に臭いがたとえられるシュールストレミングは、発酵させたニシンだ。インターネット上には無鉄砲な「グルメ」たちが試食に挑戦する自撮り動画がいくつも存在し、話題になっている。悪臭が強いため、屋外で缶を開けるべきだとされ、しかもバケツに水を張ってその中で開けるのが望ましい。

 マーリンさんは首都ストックホルムから北に200キロ以上離れた小さな漁村スカルサ(Skarsa)で、この食材の汚名返上をはかっている。海辺にたたずむ自分のレストランの外に立ち、「塩味の利いたこの酸味はパン、ジャガイモ、バター、タマネギと相性がよく、とにかく素晴らしい」と絶賛する。

 バルト海(Baltic Sea)産ニシンを塩漬けにしてたるの中で数か月ほど寝かせ、発酵させる。その後缶詰にする。

 シュールストレミングの臭いは争いの種にさえなることがあるが、近年は専門の博物館ができたり、レストランでシュールストレミング限定の日が設けられたりして、他の客の「鼻を守る」試みがなされている。

 しかし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で客足が遠のいた今年、マーリンさんとアナさんの姉妹は「シュールストレミングの日」を開催しないことにした。代わりにシュールストレミングの楽しみ方を紹介する小さなイベントを企画し、友人や同僚を招いて少人数で料理を試食してもらうことにした。

 マーリンさんは招待客のテーブルから離れて缶を開け、刻んだ赤タマネギ、ゆでたジャガイモ、ディル、トマト、チャイブ、サワークリーム、ハードチーズと共にシュールストレミングをスウェーデン風平焼きパンの上にのせた。