■さようなら、ヒドロキシクロロキン

「私たちは、患者に対して手当たり次第に治療を施しているわけではなく、より的を絞った薬剤と処置のリストを使って進めている」

 そう説明するのは、プロヘルス・ケア・アソシエイツのグリフィン氏だ。これは、抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンが、治療の候補として既に存在していないことからも見て取れる。かつてドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が推奨し、議論を呼んだこの薬剤については、実際の治療効果が研究で証明されたことは一度もない。

 薬以外でも、重症患者への治療において進展は見られる。

 米メドスターモンゴメリー医療センター(MedStar Montgomery Medical Center)の看護師、キルステン・ヘンリー(Kiersten Henry)氏は「流行の初期には、早い段階で患者に挿管していた。それが今では、挿管を避けるためにできる限りのことをしている」と話す。

 挿管が必要となるケースはもちろんある。ただ、これが感染症などの合併症リスクの残る侵襲的処置であることに変わりはない。

 7月に英医学誌ランセット(The Lancet)で発表された論文によると、ドイツでは人工呼吸器を装着したCOVID-19患者の53%が死亡したとされ、また80歳を超える患者のグループでは、この数字が72%まで上昇したとされる。

 そこで、鼻から大量の酸素を患者に供給する「高流量酸素療法」が代替処置として用いられるようになった。

■「180度の転換」

 これらの治療の向上については、最近の研究結果によって裏付けられている。しかし、医師らは以前から、医学的観察に基づき実践を続けてきた。グリフィン氏によると、挿管、ステロイド、抗凝血剤、ヒドロキシクロロキンなどについての考え方に「180度の転換が起こった」のは「3月上旬から4月上旬にかけて」だという。

 しかし、このような医療現場での進展や改善にもかかわらず、専門家らは決して楽観しないよう注意を促す。

 SFARのレオーネ氏はAFPの取材で「今後も必ず死者は出る。この病気に対する治療法が見つかったなどと考えるべきではない」と強く念押しした。(c)AFP/Paul RICARD and Ivan COURONNE in Washington