■ひつぎ開ければ別人だったケースも

 遺体の名前が示された埋葬場所を家族が掘り起こしたところ、ひつぎの中が空っぽだったり、年配の母親の遺体を捜していた家族がひつぎを掘り起こしてみると、若い男性の遺体だったりしたケースもある。イスラム教で死者を敬うのに必要な布に包まれていない遺体もあった。

 イスラム教では、死者は早急に、通常は24時間以内に埋葬しなければならない。火葬は禁忌とされ、改葬は、遺体が損なわれていなければ必ずしも禁止されてはいないが、前代未聞だとナジャフの聖職者はAFPに話した。

 それにもかかわらず、家族らは、改葬によって伝統的な埋葬を執り行うことができ、気持ちの区切りが付いたと、ほっとした表情を見せる。

「父がここ(砂漠)に埋葬されてからずっと、父が死に際に言った『息子よ、私を家族の墓地に埋葬してくれ、一族と遠く離れた場所に埋葬しないでくれ』という言葉を何度も思い起こしてきた」と、ファーストネームだけを明かす条件でAFPに語ったフセインさん(53)は言う。

 フセインさんは数百万人のシーア派が埋葬されている広大な墓地「ワディ・サラーム(Wadi al-Salam)」に父親を改葬するため、遺体を手で掘り返した。

「数か月間ずっと気になっていたことを、望み通りに実行に移すことができた」とフセインさんは語った。(c)AFP/Qassem al-Kaabi