■「絶対に安全」

 オーストラリア国立大学(Australian National University)中国政策研究所(China Policy Centre)の姜雲(Yun Jiang)氏は、米国のパンデミック対応の手際の悪さは、中国に明らかに好機を提供しているとみる。「米国の対応が十分でないというだけではなく、むしろ米国民の利益に反しているという事実は、中国にとって大きな助けだ」

 人口1100万人の都市・武漢は、新型コロナウイルスによる中国全体の死者4634人の80%以上を占め、パンデミック初期の厳しい日々から長い道のりを経て来た。数週間に及ぶ息の詰まるようなロックダウン(都市封鎖)時には、無人の街へと変貌もした。

 だが、市内での新規感染者はここ数か月間は報告されておらず、交通渋滞は復活し、ショッピングモールには客が詰めかけ、屋台では武漢名物のザリガニ料理が再び提供されている。

 マスクは人々の首から垂れ下がっているか、まったく着用されていない。高まる自信を示すように、先月には市内のプールで行われた大規模イベントに数千人がマスクなしで参加した。世界からの批判に対して中国当局は、新型ウイルス抑制に成功した証しだと反論した。

 武漢の工場で働く人にAFP取材班が「どのようなリスクがあると思うか?」と尋ねると、「武漢は今、完全に安全だと思う」という答えが返ってきた。

■「冬がやって来る」

 しかし、誰もが勝利をかみしめているわけではない。多くの武漢市民は均等でない回復状況と、新たな流行の可能性を引き続き懸念している。

 武漢の生鮮市場で豆腐店を営むイ・シンホア(Yi Xinhua)さん(51)は「景気は本当に悪くなった。仕事に出るのがいいのかどうかさえ疑問に思う」と言った。豆腐は形や大きさごとに整然と並んでいるが、買いに来る客はほとんどいない。売り上げはパンデミック発生前と比べて半減したという。

 同じ不満を武漢ではよく聞く。多くの事業主に言わせると、外出への恐怖感が今も残っていることに加え、流行初期に数百万人が武漢を離れたまま、いまだ戻っていないからだという。雇用主らは、あの集団脱出で地元の労働力も減ってしまったと嘆く。

「誰もが新型コロナウイルスの再流行を恐れている。それはそうでしょう? 夏が終わって、冬がやって来るんだから」とシンホアさん。「私たちは少しは回復した。だけどもしもウイルスが戻って来たら、またひどい打撃を受けることになる」

 映像前半は武漢市内のレストランや夜市の様子。後半は武漢市内の市場やショッピングモールの様子。3、4、5日撮影。(c)AFP/Dan Martin