【9月15日 AFP】イタリア・ベネチア(Venice)にとって、この1年はひどい年だった。

 昨年11月には、「アクアアルタ(Acqua alta)」と呼ばれる高潮が発生、高さ187センチと1966年以降の最高水位を記録した。浸水被害に見舞われたベネチアは、経済的打撃にも苦しんだ。

 2月にはベネト(Veneto)州で、同国初の新型コロナウイルスによる死者が確認された。国内の死者は3万5000人を超えている。

 ついに今月2日、第77回ベネチア国際映画祭(Venice International Film Festival)が開幕した。窮地に陥った愛すべき都市ベネチアの希望と再生の象徴だと大々的に報じられている。

 しかし、毎年推定3000万人の観光客が来ることに慣れている地元の人にとって、今年は祝うべきことはほぼない状態だ。

 ツアーガイドのフランチェスカさんは、街はぽっかり穴が開いたようだと言う。米国や中国からの入国は制限されており、観光客の姿は見られない。

 フランチェスカさんは観光客が減ったことについて「悲しいが、(街は)美しくなった」と話す。

 ベネチア市長によると、観光客の数はサンマルコ広場(Saint Mark's Square)のハトやカモメの数を上回るようになり、ホテルの客室は40~50%埋まっているという。

 しかし、ベネチアが本調子を取り戻したわけではない。

 今でも多くの店は、新型コロナによるロックダウン(都市封鎖)で休業したままだ。8日には、サンマルコ広場の店舗の約3分の1が閉じていた。

 11世紀からあるリアルト市場(Mercato di Rialto)で魚を売るアンドレーア・ディ・ロッシ(Andrea Dei Rossi)さんは、今年の売り上げは80%減少していると語る。主に市内の多くのレストランが閉鎖されたためだという。

 今年のベネチア国際映画祭は、規模を縮小して開催された。渡航制限で多くのスターや映画製作者、業界幹部らが出席できなかった。

 だが、開催地であるリド(Lido)島の飲食店やバーなどは、映画祭に集まって来た人たちで少なくとも一時的にはにぎわった。

 一方で、ゴンドラの船頭ウォルターさんのように、懐疑的な人もいる。

「映画作品は少なく、いくつかイタリア映画があるだけだ。ベネチアは活気があると見せるため、たとえ中身がなくても、どうしても実施しなければいけなくて開催された政治的な映画祭だ」と語った。(c)AFP/Alexandria SAGE