【9月11日 AFP】オーストラリア西部にある先住民アボリジニの洞窟遺跡が今年5月、英豪系資源大手リオ・ティント(Rio Tinto)の鉄鉱石採掘場を拡張する際に破壊された問題をめぐり、アボリジニ・コミュニティーから激しい怒りの声が上がったことを受けて、同社の最高責任者(CEO)と幹部2人が11日、退任すると発表した。

 リオ・ティントのサイモン・トンプソン(Simon Thompson)会長はこの件に関する調査委員会の終了後、ジャンセバスチャン・ジャック(Jean-Sebastien Jacques)CEOが「双方の合意」によって退任すると明かした。さらに、同社の基幹となっている鉄鉱石部門のトップ、クリス・ソールズベリー(Chris Salisbury)氏と企業関係担当トップのシモン・ニーブン(Simone Niven)氏も退任するという。

 同社は5月24日、ウエスタンオーストラリア(Western Australia)州ピルバラ(Pilbara)地域のジューカン渓谷(Juukan Gorge)にある4万6000年前の洞窟遺跡を発破。かつてアボリジニが暮らしていたことが分かっている岩屋群の中では最古級だった。

 トンプソン氏によると、ジャック氏は後任が決まるまでか、決まらない場合は来年の3月31日まで現職にとどまり、他の2人は今年の12月31日に退任するという。

 調査委員会の報告によると、リオ・ティントは同地区で発破を行う認可を取得していたが、「社内の基準や内部指針にそぐわなかった」という。

 リオ・ティントが発破の認可を取得した1年後に岩屋の一つで考古学発掘調査が行われ、ジューカン渓谷の文化的重要性が確認された。

 この発掘調査では、2万8000年前のカンガルーの骨を研いで作られ、これまで見つかっている中ではオーストラリア最古となる骨角器や、髪の毛を編んで作られたベルトが見つかった。遺伝子解析で、この髪の持ち主は現在も同地域に住むアボリジニの祖先に当たることが分かっている。

 ウエスタンオーストラリア州政府は現在、アボリジニ遺跡周辺での採掘作業を規制する法律の見直しを行っている。(c)AFP