【9月17日 AFP】中国政府は新型コロナウイルスをめぐり世界から不信の目を向けられる中、パンデミック(世界的な大流行)発祥の地として疑われている中部・武漢(Wuhan)市のイメージを英雄的な被害者としてつくり直そうとしている。

 米国が新型ウイルスの流行に苦戦しているのを横目に、中国は政府高官のコメントや国営メディアの大々的な報道を通じ、武漢の「再生」と自国の流行抑制策を喧伝(けんでん)する広報キャンペーンを毎日のように展開している。

 こうした動きは9月初旬に頂点を迎えた。武漢の小学校では鳴り物入りで児童たちの登校が再開され、また、市当局はパナソニック(Panasonic)や化学大手ダウ・ケミカル(Dow Chemical)、ノキア(Nokia)といった多国籍企業の幹部ら数十人を凝った演出の見学ツアーでもてなした。

 3日間に及ぶ武漢見学ツアーには、小学生らによる中国の伝統的な歌劇やバレエの披露、衛生対策の見本として改修済みの食品市場見学、ウイルスへの勝利を象徴しライトアップされた高層ビルを眺めながらの長江(Yangtze River)クルーズなどが含まれた。

 招待した企業幹部らに対し、中国当局の担当者である林松添(Lin Songtian)氏は「マスクを着用せずに集まることのできる場所は現在、世界にほとんど存在しない」と述べ、武漢がその数少ない場所の一つであると示唆。さらに「これは武漢がウイルスに勝利したこと、そして(武漢が)再始動したことを証明している」と語った。

 しかし、武漢の生鮮市場がパンデミックの発生地だと広く考えられていることは、こうした新たな物語から消えている。中国の王毅(Wang Yi)外相は欧州訪問中の8月28日、新型コロナウイルスの起源は中国でない可能性があるとの見解を示唆した。

 こうした動きについて専門家らは、中国は新型コロナウイルスが国家の威信に与える悪影響を認識した上で、比較的成功を収めている回復劇を利用して、国際的な批判の高まりに対抗しようとしていると指摘する。

 中国は新型ウイルスと武漢当局者らによる流行初期の隠蔽(いんぺい)工作をめぐり、外国の辛辣(しんらつ)な視線にさらされている。

 地政学的分析を専門とする米コンサルティング会社ユーラシア・グループ(Eurasia Group)のアジア担当アナリスト、ケルシー・ブロデリック(Kelsey Broderick)氏は「中国政府は『われわれは問題を克服したので、あなた方の対策を支援できる。そして(願わくは)有効なワクチンを持つ最初の国になる』という筋書きを望んでいる」という。「それが、武漢の生鮮市場がこの危機を引き起こしたという考えから、中国が脱出できる唯一の方法だ」