【9月11日 AFP】オーストラリアで絶滅が危惧されるコアラを保護する新法をめぐり、同国で最大の人口を擁するニューサウスウェールズ(New South Wales)州が、政権運営の危機に直面している。

 ニューサウスウェールズ州議会は昨年12月に、新たなコアラ保護法案を可決。同法について、農家と地方部を支持基盤とする国民党が、農家を犠牲にするものだと怒りを示し、グラディス・ベレジクリアン(Gladys Berejiklian)州首相の自由党への支持を撤回。

 これによりベレジクリアン州首相は、単独では議会で法案を通過させることができない少数党政府を率いていかざるを得なくなった。

 オーストラリアならではのこの政争勃発に先立ち同国では、前例のない規模の森林火災がコアラの生息地を広範囲にわたって焼き尽くし、種の存続を危惧する声が上がっていた。

 国民党は、コアラ保護新法は「都市中心主義の議員らが自己満足するための露骨な手段」だと非難。同法により、農家は自分の土地を自由に伐採できなくなると訴えた。

 環境保護団体は、緊急介入をしなければ、同州でコアラは2050年までに絶滅するとみられているとして、国民党の主張を批判した。

 フリンダース大学(Flinders University)のコーレイ・ブラッドショー(Corey Bradshaw)教授(地球生態学)は、ニューサウスウェールズ州の伐採規制に関する法律は国内で最も寛容であり、取り締まりが緩い上に罰則も十分でないため、森林伐採問題に拍車が掛かっていると指摘。

 同教授は「大規模森林火災の増加、広範囲の森林伐採の伝統とその継続、不十分な法律が原因で、ニューサウスウェールズ州のコアラは確かに絶滅の運命にある」と述べている。(c)AFP