【9月10日 People’s Daily】「わずかばかりの山のわき水、つぼに入れて村まで十里、こぼさぬようにと大事に運ぶ、水の値は油と同じ」。古くから歌われる民謡は、中国江蘇省(Jiangsu)徐州市(Xuzhou)銅山丘陵に住む農民たちの思いを表している。一帯の集落は飲み水が不足し、飲める水も有害の恐れがあるフッ素混じりの水や塩辛い水ばかりだった。

「ここの村人が話すことはいつも同じ。『いつになったら都会の人と同じ水を飲めるのか?』でした」。銅山丘陵にある陵山区の王維峰(Wang Weifeng)党書記は感慨深げに話す。農村で安全な水を飲めるよう、都市と農村の水道を一体化するプロジェクトが2018年に完成。1.2万キロにわたり水道管が敷設され、銅山丘陵で20以上の鎮(日本の町に相当)と1000以上の村に安全な飲み水が行き渡った。地下水などに頼ってきた歴史についに別れを告げた。

「水が飲めない」もしくは「飲めない水」という苦しみから同じく解放されたのは、吉林省(Jilin)通愉県(Tongyu)だ。ホルチン草原の東端に位置し、年間の平均降水量はわずか350ミリ(東京が約1500ミリ)、地下水は人体に影響の恐れがあるフッ素や鉄分、マンガンなどが多量に含まれている。2019年末までに、県内全域の655か所で工事が行われ、4540キロの水道管が敷設され、飲み水の問題が解決した。

 そして今年5月20日、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)カシュガル地区伽師県(Gaashi)では、約17.5億元(約271億円)を投入した工事により、毎日8.5万トンの水を供給できるようになった。伽師県の貧困地域に暮らす1.53万人が安心して水を飲めるようになり、これで新疆ウイグル自治区のすべての貧困地区に安全で新鮮な水が行き渡った。

 中国国務院(政府)新聞弁公室は8月21日の記者会見で、「今年7月までに、農村で2.56億人分の水供給体制を改善し、貧困地域で1710万人の飲み水問題を解決した。政府の基準に照らして、貧困地域の飲み水問題は全面的に解決した」と強調した。

 水利省農村水利水力発電局の陳明忠(Chen Mingzhong)局長は「脱貧困政策を一層推進するため、今後さらに農村での水供給体制を強化していく」と強調。開発が遅れている県を中心に水の供給施設や管理体制の不備を補い、水道が普及した県でも問題の再発防止に努め、長期的な管理メカニズムを構築していく考えだ。(c)People's Daily/AFPBB News