【9月9日 People’s Daily】京劇の名優たちが一堂に会し、美声を披露する。劇場でも見られないような豪華メンバーが自宅にいながら鑑賞できる。新型コロナウイルスの感染が拡大して以降に始まった「京劇のオンライン公演」は広く人気を呼んでおり、特に若者の間で新しいファン層を開拓している。

 京劇界で最も権威がある組織「国家京劇院」は8月8日から9月6日にかけ、全国18の京劇団体と共に「京劇の夏-コロナと闘うオンライン公演」を実施した。文化観光省のサイト、国営放送局・中国広播電視総台の映像アプリ「央視頻」、ラジオ局「文芸の声」、動画投稿アプリ「快手」、FM局「ヒマラヤ」「蜻蛉(トンボ)FM」などを通じて毎晩7時半、京劇をオンラインで上演した。8月24日までに視聴した人は計4648万人に達し、「いいね」のクリック数は2134万回に上った。

 国家京劇院の張亜峰(Zhang Yafeng)副院長は「5G(第5世代移動通信システム)や新しい表現技術が急速に発展し、オンライン観賞は若者が文化を享受するスタイルの一つとなった。多くの人が好む方式で京劇を広めるのは時宜にかなっている」と話す。伝統を守りつつ創造に挑み、若者に京劇の魅力を伝えようとしている。「私はまだ10代で、初めて中華伝統の美を体験した」「心ゆくまで堪能した。多くの千両役者を自宅で見られるなんて」。インターネット上では若者からの称賛が後を絶たない。

 新型コロナウイルスの感染が拡大した時期、「オンライン公演」「オンライン観劇」は新たな文化スタイルとなった。各分野の文化団体はこぞってオンラインの表現方式を取り入れている。

 武漢京劇院による創作京劇「生活秀」は、オンライン観客が100万人を超えた。主演で国家1級女優の劉子微(Liu Ziwei)さんは「オンライン公演の効果は、若者に京劇の伝統を伝えることだけではない。有力団体や名優が結集することで互いに刺激を生み、京劇の創造力を掘り起こす作用もある」と意義を語る。

 オンライン上演はほとんどの役者にとって初めてのことだ。これまでと同じ演技を、ただカメラで撮影すればいいという簡単なものではない。張亜峰副院長は「画面越しにどう戯曲の魅力を伝えるか。実際の舞台で目の前の観衆に伝えるのと異なる新しい表現方式を絶えず模索している」と話す。ネット上では既に「まるで舞台のすぐそばにいる感覚」「目の前で見ているよう」と評判にもなっている。

 演目の間には、役者が生中継で観客の質問に答えるなどのオンライン交流も始めており、双方向性が観客の心をひきつけている。張亜峰副院長は「役者と観衆の相互交流も、これまでの劇場公演ではなかった新しいスタイル」と強調する。北京市の「梅蘭芳大劇院」の「快手」公式アプリでは、京劇の伝統演目「空城の計」「楊門女将」「鎖麟嚢」の戯曲を視聴者が一緒に歌うよう呼びかけており、多くの若者が動画を投稿している。新しい技術が役者と観客の結び付きを深め、京劇の世界に新たな創造をもたらそうとしている。(c)People's Daily/AFPBB News