【9月9日 People’s Daily】北京市西北部の中関村(Zhongguancun)地区は「中国のシリコンバレー」と呼ばれる最先端技術の集積した地域だ。90以上の大学、100万人近い学生、国家レベルの研究施設が400か所以上、2万社以上のIT・ハイテク企業が集まり、世界的に見ても起業や投資が最も活発な地域の一つだ。

 その中関村の中心部に位置し、北京大学(Peking University)西南門から500メートル足らずの場所に、顧竹(Gu Zhu)氏が創業した「佳格(Jiage)」のオフィスがある。「80年後(1980年代生まれ)」と呼ばれる若い世代の彼は、かつて地球観測衛星の研究に関わる宇宙科学者だったが、農業に関するビッグデータの会社を興した。同社のデータプラットフォーム「春耕」では、観測衛星を通じて全国各地の田畑の耕作状況がリアルタイムで把握できる。新型コロナウイルスの感染が拡大していた時期、わずか10日間で完成させたものだ。

「私が取得した博士号は『空間科学』。すなわち、人工衛星を通じたビッグデータの分析です。衛星が撮影した写真を通じて、全国各地の農作物の状況を分析しています」

 佳格は人工知能(AI)に基づき、気象予測から農作物の適切な生産周期の計算、病害虫防止など農業の全産業チェーンに関するデータ提供や管理サービスを行っている。

「本当のビッグデータは農民の頭の中にある。農民は夕焼けを見るだけで、明日雨が降るかどうか分かる。今日は肥料をやるか、水をまくか、家で寝ていればいいか、誰にも教わることはない」。顧竹氏はそう話す。ただ、社会の都市化が進んで農村の人口が減少する中で、「新型職業農民」と言われる新規就農者が増えてきた。顧竹氏は日進月歩の技術を活用し、新規就農者に貢献しようとしている。

 佳格のビッグデータは既に全国2000万ヘクタールの田畑をカバーしている。天気予報や降水確率といったデータは手軽に入る時代だが、それぞれの農家はもっと詳しいデータを求めている。顧竹氏は「新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)と内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)、東北地方の農家ではそれぞれ、知りたい情報は違う。各地のニーズを理解してこそ、役に立つデータを提供できる」と力説する。

 佳格は新たなシステム「耘境」を開発した。東アジア50年間の気象データと、リアルタイムに変化する農業ビッグデータを統合した。農家はパソコンやスマホでいつでも気候の変化や農作物の生育状況の予測、農薬散布の必要性などを知ることができる。1平方キロメートル単位の精度で予測できる。

 顧竹氏と研究チームは常に全国各地の田畑を飛び回っている。「農民との何気ない会話が、宝になる」。衛星から手に入れるビッグデータと、足で稼ぐ生の情報。「天気に左右されて働く農業」から、「天を知り、自ら動く農業」へ。顧竹氏の夢はさらに広がっている。(c)People's Daily/AFPBB News