【9月8日 AFP】ミャンマーで11月に行われる総選挙に向けた選挙運動が8日、解禁された。

 ノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)受賞者のアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問は、ロヒンギャ(Rohingya)難民問題をめぐり国際的な評価はがた落ちになったものの、国内では今も根強い人気を誇っている。

 与党・国民民主連盟(NLD)党首のスー・チー氏は、いまだ影響力を持つ軍部に対抗し、民政移管後初の総選挙だった前回2015年に続く圧勝を掲げている。

 新型コロナウイルスが選挙に影響を及ぼすことも懸念されているが、NLD支持者らの熱気は変わらない。

 軍政時代に策定された憲法下で、軍部は依然として強大な力を持っている。主要な3省庁を支配している他、議会では4分の1の議席を占めており、実質的に法案に対し拒否権を発動できる。

 こうした状況を背景にスー・チー氏は8月、フェイスブック(Facebook)への投稿で「普通の民主主義国のように議席の半数を超えるだけでは十分でない」と述べ、有権者にNLDへの投票を呼び掛けた。

■落ちた国際的名声でも熱狂的支持

 かつてミャンマー民主化運動の象徴とされたスー・チー氏の国際的名声は近年、ミャンマー政府によるイスラム系少数民族ロヒンギャのジェノサイド(大量虐殺)疑惑をめぐり地に落ちた。

 多数派のビルマ民族が占める地域では依然として、NLDが熱狂的に支持されているが、紛争に悩まされてきた国での和平プロセスの停滞は、NLDはビルマ民族のためだけに行動しているという認識と相まって、少数民族政党に有利に働く可能性がある。

 与党NLDの最大の敵である連邦団結発展党(USDP)はこれを好機と捉えている。党首のタン・テイ(Than Htay)氏はAFPに「少数民族政党と理解を深めようとしている」と語った。

■コロナで日程延期を求める声も

 ミャンマーでは新型コロナの感染者は1610人、死者は8人と比較的被害は少ないが、ここ3週間の感染者数は4倍に増えており、投票に大きな影響を与える可能性はある。

 選挙集会は最大人数50人までに限られており、日程の延期を求める声さえある。だが、スー・チー氏は選挙日程の遅れを嫌うだろうと、ヤンゴンを拠点に活動するアナリスト、リチャード・ホーシー(Richard Horsey)氏は指摘する。

 ミャンマーにおける新型ウイルスとの闘いを先導してきたのがスー・チー氏であり、日程が延びるほど「その闘いに勝っていないというサインになってしまう」からだと同氏は説明する。無理に日程を延期したとしても、2か月以上の延期となれば理論上、憲法の危機や非常事態宣言さえも招きかねない。

 観測筋の多くはラカイン(Rakhine)州北部など、国内最悪の紛争地帯では投票の中止があり得、さらなる不満が蓄積されると予想している。(c)AFP/Richard SARGENT / Hla-Hla HTAY