【9月8日 AFP】フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領は7日、トランスジェンダー女性を殺害し、有罪判決を受けた米海兵隊員に恩赦を与えた。人権団体からは、激しい非難の声が上がっている。

 ジョセフ・スコット・ペンバートン(Joseph Scott Pemberton)受刑者は2014年10月、フィリピン北部の港湾都市オロンガポ(Olongapo)で行われていた軍事演習後の休暇中、バーで知り合ったフィリピン人のジェニファー・ロード(Jennifer Laude)さんを殺害。禁錮10年の判決を言い渡され、収監された。

 フィリピンの地方裁判所は先週、刑務所内での態度が模範的だとして刑期の半分強しか過ごしていないペンバートン受刑者に、仮釈放の資格があると判断した。しかし、控訴されたため引き続き身柄が拘束されていた。

 元検察官のドゥテルテ氏はテレビ放映された演説で、ニュースでペンバートン受刑者の事件を知り、恩赦を与えることを自らの意思で決めたと説明。法相も参加した閣僚会議後、ドゥテルテ氏はペンバートン受刑者について「公正な扱いを受けていなかったので、私が恩赦で釈放することにした」と述べた。

 ロードさんの遺族の代理を務める弁護士は、今回の決定はフィリピンの司法制度を「侮辱している」とし、強く非難した。

 フィリピンでは長年、米軍基地の撤退を求める動きがあり、今回の恩赦によって国内の反米感情が再燃している。

 左派団体バヤン(Bayan)の指導者レナート・レイエス(Renato Reyes)氏は、ペンバートン受刑者の「特別待遇」を非難した。

 同氏は「もしフィリピン人が恩赦を受けたかったら…長期にわたる手続きが必要となる。フィリピン人を殺害したあの米兵には、急行レーンが与えられた」とツイッター(Twitter)に投稿した。

 2016年の大統領就任以来、ドゥテルテ氏は米国と距離を置き、中国との関係を重視している中での恩赦となった。(c)AFP