【9月19日 AFP】アジア各地では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で生活に困窮する家族の手により、数万人の少女たちが望まない結婚を強いられている。

 インドネシア、インド、パキスタン、ベトナムなどに残る伝統的な地域社会では、児童婚はごく普通な行為としてこれまで続けられてきたが、慈善団体が介入し、教育や女性の健康に関する各種サービスへのアクセスを促進してきたことで、その数は近年、減りつつあった。

 しかし、ここにきて改善傾向にあった状況が再び悪化に転じ始めている。専門家によると、新型コロナウイルスの影響で多くの人が職を失い、家族を養うことが難しくなっているという事情がその背景にはあるという。

 非政府組織(NGO)「ガールズ・ノット・ブライズ(Girls Not Brides)」でアジア地域を担当するシプラ・ジャハ(Shipra Jha)氏は、「児童婚はジェンダー間の不平等と家父長制の構造に深く根差している。そして今、『コロナ時代』で悪化した」と指摘する。児童婚は平時であっても貧困、教育の欠如、社会不安を背景に行われてきたが、現在のような危機的状況ではそれが急増するというのだ。

 国連(UN)によると、18歳未満で結婚する少女の数は、全世界で毎年約1200万人に上るという。

 だが同NGOは、新型コロナウイルスの影響で社会や経済が受けた打撃に対する緊急措置が講じられなければ、今後10年のうちにさらに1300万件の児童婚が行われると警告している。

■「コロナ世代」

 児童婚対策の議論で中心となるのは教育の問題だ。しかし、ロックダウン(都市封鎖)で数十万人の子どもたちが学校に通えなくなると最も大きな影響を受けるのは貧困地域の少女たちだと活動家らは指摘する。

 先ごろ、世界の元指導者や教育、経済分野の専門家ら275人から、各国政府や世界銀行(World Bank)などの組織に向けてある提言がなされた。その内容は、新型コロナウイルスの影響で「教育と公正なチャンスを人生から奪われてしまう…コロナ世代」を生み出さないよう注意を呼び掛けるものだった。

 公開書簡に署名した275人の中には、ペルベズ・ムシャラフ(Shaukat Aziz)元パキスタン大統領、トニー・ブレア(Tony Blair)元英首相といった元国家元首や、国連および国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)の元事務局長らが名を連ねていた。