【9月4日 AFP】太平洋の島国パラオが、米軍基地の設置を強く要望している。フィリピンの東方約1500キロに位置するパラオ周辺では中国が影響力を拡大しており、米国はそれに対抗しようとしている。

 先週パラオを訪問したマーク・エスパー(Mark Esper)米国防長官は、中国が太平洋地域を「不安定化させる活動を続けている」と非難した。その際、パラオのトミー・レメンゲサウ(Tommy Remengesau)大統領は、パラオへの米軍施設建設を歓迎するとエスパー氏に伝えたという。

 パラオ大統領府が今週明らかにしたところによると、レメンゲサウ氏はエスパー氏に宛てた書簡で、「米軍に対するパラオの要望はシンプルだ。共同利用の可能な施設を建設し、定期的に利用しに来てほしい」と述べていた。書簡はパラオの最大都市コロール(Koror)で手渡されたものだという。

 レメンゲサウ氏はまた、米沿岸警備隊(US Coast Guard)がパラオに駐留し、海洋資源豊富な領海の警備を支援することも提案していた。パラオの領海はスペインの国土と同程度の広さがある。

 パラオは独立国家だが軍事力を持たず、国防は「自由連合協定(コンパクト、Compact of Free Association)」に基づき米国が担っている。

 レメンゲサウ氏は、パラオに米軍基地ができれば、地域での米国の軍備増強につながるだけでなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)の影響で主要産業の観光が打撃を受けているパラオ経済の支援にもなると述べている。

 太平洋地域には台湾と国交を結んでいる国が複数あり、台湾を自国の一部とみなしている中国は切り崩しを図っている。昨年、ソロモン諸島とキリバスは台湾と断交し、中国と国交を樹立した。

 パラオは中国の働きかけを拒否しており、中国は対抗措置として、2018年に中国人のパラオへの観光目的での渡航を禁止している。(c)AFP/Bernadette Carreon