【10月1日 AFP】過去5年間、イスラム過激派が中東の聖域を失っていくに従い、欧州に対するテロの脅威も変質を遂げてきた。だが依然、欧米諸国はさらなる攻撃に備えなければならないと専門家らは警告している。

 過去20年間にわたって最も注目を集め、かつ最も恐ろしいテロ攻撃を繰り返してきた国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)とイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」は、ともに世界的組織としての勢力を失っている。だが、支部や系列組織にいくら分裂しようとも、彼らの残忍なイデオロギーは今でも個人を鼓舞し、組織の名の下に無差別攻撃を行わせる力がある。

 今月2日、仏パリの裁判所で、2015年1月に起きたイスラム過激派による風刺週刊紙シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)での大量殺人と、ユダヤ系スーパーでの警官1人と人質数人の殺害事件に関与した被告14人の公判が始まった。この襲撃事件では、ISとアルカイダの両方が犯行声明を出した。

 この銃撃事件が先駆けとなり、フランスではテロによる未曽有の波状攻撃が続いた。

 最多の犠牲者が出たのは、同年11月13日にパリのコンサートホール「バタクラン(Bataclan)」とその他で起きた同時襲撃事件だ。シリアのIS集団の中核指導部による計画で、130人が銃撃の犠牲となった。

 専門家らは、同様のスタイルの攻撃が現在再び起きる可能性は少ないとみている。イラクとシリアで支配領域と構成員を劇的に減らしたISはなおさらだ。

 AFPの取材に応じた仏検察当局のテロ対策関係者によると、今年起きている典型的な銃撃事件は「情報機関にマークされていない、孤立した人物…特定されている過激派ネットワークとの接触が限られているか、全くない個人」が起こしているという。

 2015年以降、フランスではテロ行為に分類される17件の犯罪が起きている。そのうち2020年に発生した3件は、どれもテロ集団からの犯行声明はない。精神的問題を抱えた孤立した個人らによる犯行だ。

 ジェラルド・ダルマナン(Gerald Darmanin)仏内相は8月31日、フランスに対するテロ攻撃のリスクは依然として「非常に高い」と語り、国内のイスラム過激派データベースには8132人が危険人物として登録されていると述べた。