■複雑なビジネス

 利益は出ているものの、タイの酒類に関する厳しい法律によってグランモンテの長期的展望には影が差している。

 タイは、熱心な仏教国である一方、世界保健機関(WHO)によるとアルコール消費量は東南アジアで最も多いという奇妙な状況となっている。

 高い関税が課され、違反した場合高額な罰金が科されるなどアルコール類には複雑な規則がある。また、免許が必要なバーは地元警察に友人が必要となることも、酒類ビジネスを難しいものとしている。

 さらに2008年に施行されたアルコール消費コントロール法は、製品へのロゴ表示と「直接的もしくは間接的に飲酒を促す」可能性があるあらゆる広告を禁止している。

 この法律はアルコール消費量の管理を目的としているが、実質的には大手ブランドほど消費者に知られていない小規模生産者を抑制する効果がある。

 批評家らは、法律の適用はこれまでも常に不平等であったとし、アルコール飲料大手はソーダ水などのノンアルコール飲料の巨大な屋外広告を設置したり、公共交通機関に広告を出したりして、自社のロゴの露出を高め、ブランド力を固めることが可能だと指摘している。

 あちこちで目にするラガービール「チャーン(Chang)」を製造している業界最大手のタイビバレッジ(Thai Beverage)は、富豪一族シリワタナパクディー(Sirivadhanabhakdi)家が所有している。米誌フォーブス(Forbes)によると資産105億ドル(約1兆1100億円)とされるタイで3番目に裕福な同家はこの他、バンコク中心部の大規模な不動産プロジェクトやホテルなども手掛けている。

 しかし、タイ保健省アルコール規制委員会の幹部、ニポン・チナウォンウェート(Nipon Chinanonwait)氏は、大手が優遇されて不公平だという批判をはねつけた。

 ニポン氏はAFPに対し、保健省はこの法律を未成年者の飲酒防止のみを目的としていると主張し、「大企業にも中小企業にも同じ手続きを求めている」と述べた。

 不平等なタイで、富豪が独占する文化を変えようとするのは非常に難しい。

「タイがどうやって動かされているのかを表している」とミミーさんは言う。「立法、行政機関、それを取り巻くすべてのものが、タイの富の大部分を所有する一握りの人々に利益をもたらすようになっている」

 ニッキーさんは、輸入したたるに入れた新しいシラーをテイスティングしながら、ワイン造りを始めるための課題は無数にあったと振り返る。そして今は、トップの座を保つために努力を続けているという。

「これが私たちの情熱だ。好きだからやっている」

 映像は6月撮影。(c)AFP/Dene-Hern CHEN and Nattakorn PLODDEE