【9月13日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)による貧困急増に対処するために、スペイン政府がベーシックインカム(最低所得保障)制度を急ぎ導入してから3か月がたった。だが申請者が雪崩を打って押し寄せたために、制度は立ち往生している。

 ベーシックインカムは1月に発足したペドロ・サンチェス(Pedro Sanchez)首相率いる社会労働党(PSOE)と急進左派ポデモス(Podemos)による左派連立政権の公約だったが、新型コロナウイルスがもたらした状況を受けて、導入の前倒しが決定された。

 5月末に閣議で承認された内容によると、一人暮らしの成人には月462ユーロ(約5万8000円)の所得が保障され、家族の場合は成人か未成年かにかかわらず1人当たり139ユーロ(約1万7000円)が加算される。世帯当たりの所得保障上限は月1015ユーロ(約13万円)とされる。同制度による財政支出は年間30億ユーロ(約3800億円)と見積もられている。

 8月20日時点での社会保障当局の発表によると、受け付けが開始された6月15日以降、75万件の申請があったが、うち審査を受けたのは14万3000件と全体の19%、承認済みは8万件にとどまっている。

 だがスペインの公務員組合「CSIF」によると、状況はもっと暗い。CSIF広報担当のホセ・マヌエル・モリナ(Jose Manuel Molina)氏はAFPに「99%近くの申請が未処理だ」と語った。

 同氏は社会福祉省が実際に審査したのはわずか6000件で、すでに財政援助を受けている7万4000世帯が自動的にベーシックインカムを給付されただけだと説明した。