■「科学を信頼?」

 好ましい傾向にある今、スウェーデンの公衆衛生当局はマスクに対する立場も含め、自国の戦略を変える理由はないとしている。

 政府の感染症対策を率いる疫学者のアンデシュ・テグネル(Anders Tegnell)氏は、ウイルスに対するマスクの感染拡大抑制効果は科学的に証明されておらず、ずさんな使用では益よりも害をもたらしかねないと指摘する。同氏は最近、記者団に「少なくとも3つの膨大なページ数の報告書が、世界保健機関(WHO)、欧州疾病予防管理センター(ECDC)、WHOが引用した英医学誌ランセット(The Lancet)から発表されており、そのすべてが科学的証拠は弱いとしている。われわれが独自の評価を実施したのではない」と語った。

 英バーミンガム大学(University of Birmingham)応用衛生研究所(Institute of Applied Health Research)の所長で疫学者のKK・チェン(KK Cheng)氏はAFPの取材に、そのような論法は「無責任」で「意固地」だと述べ、スウェーデンに戦略を変えるよう呼び掛けている。「もしも彼が間違っていたら、命が犠牲になる。だが、私が間違っていたとしても、何の害もない」

 しかしテグネル氏は、高齢者施設での予防策が改善され、また発症した人の自宅待機に加え、在宅勤務やソーシャル・ディスタンシングが順守されているために、スウェーデンの感染者数は減少していると語った。

 医師と研究者23人から成るグループは6月、日刊紙アフトンブラデット(Aftonbladet)に掲載された論説で、テグネル氏と公衆衛生当局に対してマスク非着用の方針を再考するよう求めた。それ以降、同グループやそれ以外からもたびたびこうした要請が発せられている。

 テグネル氏はそのたびに、公衆衛生当局はこの問題を「注視」しており、必要となれば導入すると答えている。(c)AFP/Pia OHLIN and Tom LITTLE