【9月1日 AFP】香港で1日から始まる大規模な新型コロナウイルス検査が、香港と中国両当局に対する深い不信感が残る同市を政治的対立によって二分している。

 人口過密の香港では6月の終わりごろから、新型ウイルス流行の第3波に見舞われており、同市は経済的打撃の大きい「ソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)」などの行動制限を再開するに至った。1日から開始される検査はこの第3波対策の一環で、希望者が対象の無料検査だ。

 しかし、中国政府による香港民主派運動の弾圧で、香港当局に対する不信感も募らせている市民は、中国本土の検査企業や医師が関与している大規模な新型ウイルス検査に鈍い反応を示している。検査希望者の登録は8月30日に開始されたが、これまでに香港の人口750万人のうち約7%の51万人しか登録していない。

 一方、政府に助言している専門家らは、隠れた感染を徹底的に発見し、現在の流行に終止符を打つには、500万人が検査を受ける必要があるだろうと述べている。

 香港では1月下旬に初めて新型ウイルス感染が確認されて以降、4800人超の感染が記録されているが、うち約75%は7月以降に確認されている。

 当局は今回の大規模検査について、中央政府の善意の支援で可能になった公衆衛生策だと喧(けん)伝している。しかし本土の関与はさまざまなうわさや臆測を呼び、生体認証データを市民監視に用いている監視国家・中国への恐怖心を増幅させている。

 民主活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン、Joshua Wong)氏を含む香港民主派の政治家や議員は8月30日、検査のボイコットを呼び掛けた。このグループはDNAデータの大量収集に対する恐怖と、中国本土で運用されているような強制的な「健康コード」システムが香港でも導入される可能性に懸念を表明した。

 香港政府は、DNAを採取したり、検査結果が本土の研究所に送られたりすることはないと繰り返し強調し、そうした懸念を打ち消そうとしている。香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム、Carrie Lam)行政長官は検査事業に反対する人々について、「たとえ公衆衛生上の問題であっても、トラブルを生み対立をあおる機会を決して逃さない」、「反北京、反政府の活発なメンバー」だと非難した。

 また中国で香港政策を担当する国務院香港マカオ事務弁公室は検査に反対する人々を、公衆衛生を「卑劣にも軽視する」「反中過激派」と呼んでいる。

 映像は1日に始まった大規模検査のため、検査会場となった小学校を訪れた人々。同日撮影。(c)AFP/Su Xinqi