【9月7日 AFP】レバノンでは、複数の宗派に政治権力が配分されている。市民と西側諸国からの圧力の高まりを受け、指導者らはこれまで政治における「悩みの種」とされてきた、パワーシェアリング(権力分有)制度の撤廃を約束している。

 レバノンは正式には議会制共和国だが、キリスト教とイスラム教の宗派間で権力を配分する宗派主義制度が採用されている。

 数十年前の合意に基づき、大統領はキリスト教マロン派(Maronite)、首相はイスラム教スンニ派(Sunni)、国会議長はイスラム教シーア派(Shiite)から選出することになっている。

 この制度は、元軍閥指導者と一握りの有力な一族出身者の権力を固めるもので、国家をまひさせ、汚職と怠慢を助長させていると批判されている。

 数々の政治的・経済的危機が発生して以来、批判の的となった政治家らは、かつて「共生の柱」と称賛されたこの制度を、活動家らと一緒になって「諸悪の根源」と非難し始めている。

 さらに首都ベイルートで先月4日に発生した大爆発では、188人が死亡、数千人が負傷、市街地の大部分が破壊され、制度の抜本的な見直しを求める声が再び上がるようになった。

 だが、既得権益が根を張るレバノンで、数十年続いた騒然とした時代の基礎となった制度を変えることは容易ではない。

■モザイク国家

 レバノンには18の公認宗派があり、128の議席はイスラム教とキリスト教間で均等に分けられている。このような体制を採用しているのは、中東ではレバノンのみだ。

 宗派ごとの人口比に合わせて政治的に代表させることが目的だが、各宗派の人口はかなり変化している。一部にとって不利益が出ることを主な理由に1932年以降、国勢調査は行われていない。

 最新の非公式な推定によると、レバノンの人口460万人のうち3分の1がキリスト教徒で、残りはイスラム教徒だ。