20年間のエンジン"ホット100"ランキング、フィアット500は14位にランクイン。フィアット500がこんな上位に入るとは、3位に入れた自分(清水草一)もまったくの想定外。500はリバイバル・カーであり、どちらかというと過去を懐かしむクルマだが、それが今世紀を代表するクルマの上位に入ったのは、どういう意味を持つのか。
最大の要因は、「乗る人も眺める人も思わず笑顔に」(藤島知子氏)「出会い頭に人を笑顔にさせる、幸せを運ぶクルマ」(嶋田智之氏)という点にあるのではないだろうか! どんな時代であろうとも、クルマは人が乗るものである以上、人の笑顔に勝るものはない。フィアット500の場合、笑顔の最大の要因は、レトロで愛らしいデザインにあるのは間違いなかろう。
技術的にも見るべき部分は多い。「スタイルとしてのフィアット500ではなく、ツインエア2気筒エンジンが、僕にとっては魅力の核」(齋藤浩之氏)という意見もあるが、実は私もほとんど同感だ。ツインエア・エンジンでなければ、フィアット500は購入の選択肢には入らない。個人的には「2気筒のフェラーリ・エンジン」だと思っているが、回すだけで興奮し、しかも薪ストーブの炎を見ているように癒されるのだ。
すでに誕生から13年を経て、次期型がEVで発表されたが、いまだに魅力は色褪せない。500は、「キッコーマンの醤油瓶のようにもはや日本にも定着した」(島崎七生人氏)のだろう。
■フィアット500
全長×全幅×全高=3545×1625×1515mm、ホイールベース=2300mm、1010kg。フェラーリ458イタリアを抑えて2011年のホット1に輝いたチンクエチェント。あっと驚くモーターバイクのような2気筒の500ツインエアは笑顔もいっぱい、振動もいっぱい。875ccターボは85psと14.8kgmでも元気に走った。
文=清水草一(自動車ジャーナリスト)
(ENGINE2020年9・10月合併号)
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