【9月1日 CNS】中国・北京市通州区(Tongzhou)のグラウンドで、おそろいのユニホームを着た子どもたちが野球の練習に励んでいる。少年や少女たちは、親を失った孤児や、親に養育を放棄された「事実上の孤児」と言われる子どもばかり。中国の元プロ野球手、孫嶺峰(Sun Lingfeng)さん(44)が全国各地から北京に引き取り、ボランティアで面倒を見ている。

「親が刑務所に入っていたり、貧困で親が行方不明になっていたり。そんな子どもたちを何とかしたいと思って、私と友人で資金を集めて野球場や宿舎を造ったんです」

 孫さんは中国プロ野球で3度の盗塁王や最多安打、MVPなどのタイトルを獲得し、中国代表チームのキャプテンも務めた。2006年、2009年のワールド・ベースボール・クラシック(World Baseball ClassicWBC)や2008年の北京五輪に出場し、「1番・センター」を任されることが多く、「中国のイチロー」とも呼ばれていた。

 2015年に孤児たちを集めた「強棒(フルスイング)天使愛心野球チーム」を創立し、現在は6歳から14歳まで42人の子どもを指導している。孫さんは自分の師匠である元中国代表監督の張錦新(Zhang Jinxin)さんらも誘い、中国野球の「レジェンド」たちがボランティアコーチを務めている。

 子どもたちは口々に野球ができる喜びを語る。

「僕の名前は加洋扎西(JiaYangZaXi)。10歳です。施設に来て2年ぐらいで、キャッチャーとピッチャーをやっています。野球が大好き」「僕は嘎譲(Ga Rang)。12歳です。ここに来て2年間で全国大会などたくさん試合をしました。将来も野球がやりたいです」

 施設には勉強を教えるボランティアの先生が6人おり、孫さんは「野球より勉強の時間を多くして、一人一人のレベルに応じて授業をしています」と話す。子どもたちは優しい先生に教えてもらい、一緒に食事や宿舎の掃除もしている。

 子どもたちに野球を教える孫さんの目標は高く、「一番の目標は世界トップクラスの選手に育てること。もしくは中国のプロ野球や、世界各国のプロ、大学チームに全員が行けるようにしたいんです」と語った。

 宿舎には「栄誉の部屋」と名付けた部屋がある。創設以来、チームが手にしてきたトロフィーとメダルが並んでいる。国内で行われた5回の全国大会では優勝4回、準優勝1回。各国の少年野球チームが戦う「ポニー(Protect Our Nation's Youth)」アジア大会で優勝に輝き、米国で行われた世界大会では7位に食い込んだ。

 孫さんが目指す「世界のトップ」に、チームが少しずつ近づいていると感じている。「子どもたちは試合を通じて自分の実力を証明すると同時に、世界を体験し、強い自信とさらなる夢を持つことができるんです」

 厳しい現実もある。野球を続けるためには資金が必要だ。チームはほとんど寄付で運営しており、国際大会の誘いを受けても費用が足りずあきらめたこともある。

 それでも孫さんは、一度たりとも活動そのものをあきらめようと考えたことはない。「私には子どもたち北京に呼び寄せた日から責任があります。子どもたちが成長するまで、ずっと一緒にいたいと思っています」 (c)CNS/JCM/AFPBB News