【9月11日 AFP】8月にレバノンの首都ベイルートで少なくとも190人の死者と数千人の負傷者を出した爆発は、無数のドアや窓を突き破り、更地同然となった現場の港湾地区一帯はガラスの破片に覆われた。

 ここで今、ボランティアやNGO、起業家などが路上に散らばる大量のガラスの回収を試みている。その一部は、ウィッサム・ハムード(Wissam Hammoud)氏一家が営むガラス工場でリサイクルされている。

 レバノン第2の都市トリポリ(Tripoli)にある工場でガラスは溶かされ、首の細い伝統的な水差しなどに生まれ変わっている。炉内温度900〜1200度で稼働する溶解炉の周りでは、従業員らがテンポよく働いている。

 ユナイテッド・ガラス・プロダクション・カンパニー(United Glass Production Company、ユニガラス)の副社長を務めるハムード氏によると、これまでに工場に持ち込まれたガラスは20〜22トンに上る。

 一方、環境工学企業シダー・エンバイロメンタル(Cedar Environmental)のジアド・アビシャカー(Ziad Abichaker)最高経営責任者(CEO)は以前から、レバノンにおけるガラス再生利用の取り組みの先頭に立ってきた。同氏によると、今回の爆発で5000トン以上のガラスが破壊されたという。

 爆発後数日のうちに、アビシャカー氏はNGOや多数のボランティアと協力し、数十年に及ぶ固形廃棄物の堆積で危機的な状況となっている埋め立て地から、可能な限りガラスを運び出す計画を提案した。「最終的に埋め立てごみとなるガラスを再利用し、地場産業に原材料として無料で供給している」という。

■彫像に「この瞬間を閉じ込める」

 大爆発で散乱したガラス破片を集めて彫像を制作している芸術家もいる。サラ・アブ・ムラド(Sara Abou Mrad)さんはベイルートのスタジオでこう語った。

「私の思い出のすべてが作られたこの美しいベイルートが一瞬で砕け散り、ガラスの破片になってしまったことを思い出すたび、今でも痛みを感じる。だから、私はこの瞬間を閉じ込めることにした」

 ベイルートの港では10日にも、大規模な火災が発生した。8月の大爆発の影響に依然苦しむ市民の間には、今回の火災で再び不安が広がっている。(c)AFP/Susannah Walden