【9月7日 AFP】新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の脅威を世界からなくすために必要なワクチンや治療薬の開発を待つ間、ウイルスの拡散を遅らせるためのスローガンとなっているのが、マスク着用、手指消毒、それから物理的距離の確保だ。

 だが、通勤・通学が再開され、大勢の人が公共交通を利用し始めた状況でも、この3つの対策だけで十分なのだろうか。

 研究者らはここへ来て、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を工学技術というレンズを通して捉え、屋内環境の安全性を高める方法を考案している。

■加熱式ニッケル空気フィルター

 新型コロナウイルスが空気中を浮遊し、ガイドラインが推奨する対人間隔である2メートルよりもはるかに遠くまで拡散する可能性をめぐって、科学者らの間ではいっそう懸念が高まっている。

 空気中を漂う「マイクロ飛沫(ひまつ)」は、合唱の練習など一定の超拡散(スーパー・スプレッディング)現象によって生じるとみられている。

 1950年代に初めて市販された「高性能微粒子空気(HEPA)フィルター」は、病院や生物学的封じ込め措置を施した研究機関、航空機などで広く使用されている。送風機で空気を引き込み、フェルト状のフィルターを通して、最小レベルの微生物を捕獲する。

 だが、HEPAフィルターは時間の経過とともに汚染されるため、最終的には焼却処分か、加圧滅菌器による処理が必要だ。

 米ヒューストン大学(University of Houston)テキサス超電導センター(Texas Center for Superconductivity)と米ガルベストン国立研究所(Galveston National Laboratory)のチームは最近の研究で、ニッケルでできた超微細発泡体を用いた最新式フィルターの有効性を実証した。

 ニッケル発泡体を200度まで加熱することで、空気中に浮遊するSARS-CoV-2を最初のフィルター通過時に、室内から99.8%除去することに成功した。発泡体は断熱されており、室内温度を上昇させることはない。

 同チームは7月、研究成果を学術誌「Materials Today Physics」で発表した。後援企業の「メディスター(Medistar)」は、すでにこのシステムを販売するための承認を規制当局から得ている。

 メディスターによると、既存の空調設備にこのシステムを組み込んだり、移動式の空気清浄室で中を歩けるようにしたりすることも可能だという。