チェコ代表団の台湾訪問が象徴する「時代精神の変化」
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【8月31日 AFP】チェコの上院議長率いる代表団90人が、30日から5日間の日程で台湾を訪問している。アレックス・アザー(Alex Azar)米厚生長官に続き今月2度目となる外国高官の訪台について、専門家らは「時代精神の変化」を指摘する。
1979年に米国が台湾と断交して中国と国交を樹立した後、訪台した米高官の中でアザー長官は最高位。そのわずか2週間後のチェコ代表団の訪台は、国際社会での台湾の孤立をもくろむ中国の外交政策にとっては後退といえる。
台湾の蔡英文(Tsai Ing-wen)総統は、ミロシュ・ビストルチル(Milos Vystrcil)上院議長率いるチェコ代表団の台北到着を受け、「両国は中核的な価値観を数多く共有している。今後、あらゆる分野で協力が深まることを期待している」とツイッター(Twitter)に投稿した。
蔡氏が1月の総統選挙で圧勝し、再選を果たして以降、台湾との関係を拡大する国が増えている。そうした国々の多くは中国の外交政策の強硬化を警戒しており、チェコもその一つだ。
■中国の台湾包囲網 「越えられない壁ではない」
国際関係論の専門家で、台北を拠点に研究活動を行っている伊ローマ大学ラ・サピエンツァ(University of Rome La Sapienza)のファブリツィオ・ボッツァート(Fabrizio Bozzato)氏は、チェコ代表団の訪台で「中国政府が台湾を包囲して築こうとしている政治的・外交的な壁は、越えられないものではないこと」が確認されたと指摘する。
「このような公然と反旗を翻す取り組みは、欧州においてさえ、時代精神が『中国政府との見解の一致』から『中国政府への抵抗』へと変化しつつあることを示している」と、ボッツァート氏はAFPに語った。
蔡氏は、中国の強権主義に対抗したい諸外国に対し、台湾を進歩的で民主的な同盟国としてアピールしてきた。台湾が新型コロナウイルスの感染拡大阻止に成功し、感染予防のための保護具を支援物資として世界中に送ったことも、台湾の立場を強化する追い風となった。
英ノッティンガム大学(University of Nottingham)中国政策研究所(China Policy Institute)のジョナサン・サリバン(Jonathan Sullivan)所長は、チェコ代表団の訪台は台湾にとって、中国政府の「圧力と疎外化が続く中で、心理的な励みとなった」との見方を示した。
その上で、「新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)をはじめ、香港や南シナ海(South China Sea)など多岐にわたる問題において、中国が取る立場や行動は民主主義国の価値観と乖離(かいり)している。そのため、今後はより多くの政治家が立ち上がり『われわれにとっては、それではだめだ』と表明するようになるだろう」とサリバン氏は述べた。
ビストルチル上院議長は今回の訪台について、旧ソビエト連邦の強権体制の影響下にあった旧チェコスロバキアの共産政権を打倒した1989年の「ビロード革命(Velvet Revolution)」の指導者、故バーツラフ・ハベル(Vaclav Havel)元大統領の遺志を継ぐ旅になると述べている。(c)AFP/Amber WANG