【8月31日 People’s Daily】海からの風が心地よい浙江省(Zhejiang)舟山市(Zhoushan)普陀区(Putuo)。干潟では小さなカニが泥の穴から顔を出し、小枝のような低木の間をゆっくり歩いて行く。大きくても50センチ程度のその低木は、マングローブ群のメヒルギ。干潟の再生のため、区が積極的に植えているものだ。

 マングローブは海水を浄化するほか、防風・防波の役割も兼ね備え、生物の多様性を確保するのに大きく貢献している。干潟の回復のため、マングローブ以外にも広い面積でヨシやマツナなどの湿地植物を植えている。

 普陀区はここ数年、深刻な環境汚染の改善に力を入れている。

 2017年には区内すべての工場の排水調査を行い、海に汚染水を流している排出口21か所を特定。個別の指導で改善させた。2019年、沿岸の海水は水質の良い1類と2類が61.8%を占め、前年に比べてその割合は12.7%増えた。

 普陀区にある沈家門漁港も抜本的に改善した。海底に堆積した汚泥352万立方メートルを除去し、古い波止場や使われなくなった道具などを撤去。6キロにわたる沿岸で環境改善を図った。さらに海島生態公園、湾岸常時観測システムなどを整備し、「青い海」を取り戻すことができた。

 普陀区には455の大小の島があり、その環境保護も重要課題だ。

 螞蟻島は干しエビの加工が盛んな島だが、これまでは漁民がエビをあぶったり乾かしたりするのに、石炭かまきに頼っていた。「以前は島のあちこちが煙だらけで、窒息するほどだった」。71歳の漁民、丁荷葉(Ding Heye)さんはそう振り返る。2017年、島内のエビ加工業者60社は乾燥設備を改造し、燃料を石炭から軽油やガスに転換。大気が改善できた上、干しエビの品質も向上した。環境保護の意識は区内の島々の共通認識となった。

 再生された青い海は多くの人を引き寄せ、新たなビジネスも生んでいる。

「この美しい海を見て、ここで民宿を開こうと決めました」。設計の仕事をしていた趙利軍(Zhao Lijun)さんは白砂島を訪れてすぐに決意した。島では生活排水やごみの処理対策を取られているのも確認し、友人とともに出資して民宿を開始。白砂島はピーク時で毎日2000人の観光客が訪れ、昨年は9万人が島の観光を楽しんでいる。

 漁業や観光業の成功に続き、多くの産業が環境に考慮した「緑と発展の道」を走っている。

 普陀区の沿岸は船舶を修理するドックが多い。従来は砂を噴射してサビを取り除くサンドブラスト方式の作業が多く、空に砂が舞い、騒音もひどかった。現在は超高圧水を使ったサビ取り作業に切り替わり、廃水や廃棄物の常時回収、一括処理も進んでいる。ある修理会社の社長は「今年は注文のスケジュールがいっぱいで、上半期は前年同期より純利益が1.5倍になった」と打ち明ける。

 環境をよくすることは、自分たちの健康につながり、利益ももたらす。区民たちは日々それを実感している。(c)People's Daily/AFPBB News