【8月31日 People’s Daily】見渡す限りの草原を自由に駆け抜ける馬の群れ。美しい山脈を背景に飛び回るガンやカモ。長江、黄河、瀾滄江の三つの大河の源流域となる中国青海省(Qinghai)の「三江源国家公園」試行区では、以前は見かけなかった野生動物が生息し、たまに見られる程度だった動物が群れを成して生活するようになった。この光景こそが、中国政府がテスト導入している「国家公園システム」の成果そのものといえる。

 中国では1956年以降、1万1800か所に自然保護区を設けている。陸地面積の18%、海域面積の4%を占める。ただ、こうした自然保護地は複数の行政部門が管理し、各部門の監督範囲や権限が曖昧なため、環境保護と地域開発をめぐる対立が発生するなどの問題が起きている。そこで政府は特定の部門が保護区を一括管理する「国家公園システム」を2015年から試験的に導入。全国有数の自然保護区10か所を試行区としている。12省にまたがる総面積は22万平方キロに及び、三江源国家公園もその一つだ。

 景観の美しさで有名な青海省ゴロク・チベット族自治州(Guoluo Tibetan Autonomous Prefecture)マドォ県(Madoi)は平均標高約4200メートルの高地にあり、三江源国家公園の黄河源流地区の中心的地域に位置する。かつては草地を探すことは難しく、川辺は黒い土がむき出しになり、山は白い岩がむき出しになっていた。

 黄河源流区管理委員会生態資源・自然資源局の馬貴(Ma Gui)副局長は「乱開発された地域は埋め戻し、牧草を植え、一帯の姿は大きく変わった」と強調する。三江源国家公園試行区では自然の管理運営が一括されたことにより、土壌が水を貯留する水源涵養(かんよう)量は年平均6%以上増加した。10年前に比べて草地被覆率は11%増、草地年間生産量は30%以上増え、野生動物も目に見えて増えてきている。

 三江源国家公園のほか、各地の国家公園も成果を挙げている。希少種のトラやヒョウを保護する黒竜江省(Heilongjiang)の国家公園では、1736ヘクタールにわたり森林を広げ、741ヘクタールの荒れた自然を修復。クマやシカなどの野生動物も増えてきている。福建省(Fujian)の名勝地で武夷岩茶でも有名な武夷山試行区では、433ヘクタールの自然を修復すると同時に、無許可の茶の栽培や違法建築を取り締まっている。パンダを保護する四川省(Sichuan)の試行区では、パンダの生息域を2600ヘクタール回復した。政府は現在、10か所の国家公園試行区の成果を確認しており、年末には正式に国家公園のリストをまとめる方針だ。(c)People's Daily/AFPBB News