【8月30日 AFP】ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相は28日、5年前に多くの移民を国内に受け入れて物議を醸した政策について、後悔はなく、自分はまた同じ決断をするだろうとの考えを示した。新型コロナウイルス対策でメルケル氏は国民から高い支持を受け、勢いを得ている。

 メルケル氏はベルリンで行った恒例の夏の記者会見で、ドイツに流入して来る移民に国境を開放し続けた2015年の政策に後悔はしていないかと質問され、「私は基本的に同じ決断をする」と明言した。

 2015年から2016年にかけて、ドイツでは100万人を超える人が難民認定申請を行った。15年に及ぶメルケル氏の首相在任中でも特に重要な出来事だった。

 この移民流入によって国内の分断は深まり、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の台頭を招いてメルケル氏の支持率は低下した。

 しかし、4期目の任期終了が迫る中、新型コロナウイルス対策で手腕を評価されたメルケル氏の人気は予想外に高まっている。

 世論調査機関インフラテスト・ディマップ(Infratest-Dimap)の先日の世論調査では、71%がメルケル氏の仕事ぶりに「非常に満足している」または「満足している」と回答。一方、AfDはコロナ禍の中で支持率を下げている。

 ドレスデン工科大学(TU Dresden)のハンス・フォアレンダー(Hans Vorlaender)教授(政治学)は、「状況がこれほど急に変わり得るとは驚きだ」として、「一般的に、危機は責任者にとっては常に成功か失敗かの分かれ目となる」と指摘。有権者は、コロナ危機の最中にメルケル氏の「合理性と冷静さと自信」に引きつけられたのだろうと述べた。

 フォアレンダー教授は、メルケル氏が新型ウイルスと闘うために行った抑制のきいた訴えが国民に良く受け入れられたのは、「権力をマッチョに誇示するのではなく、国民の気持ちに沿ったものだったから」だと指摘した。(c)AFP/Isabelle LE PAGE with Femke COLBORNE