■地元からは反対意見も

 だが、再野生化のメリットに誰もが納得しているわけではない。例えばフランスでは、農家や地元当局からは再野生化に反対する声が強まっており、オオカミやクマ、キツネなどの野生の捕食動物が再導入されると家畜が犠牲になるという意見が出ている。

 ASPASの計画に反対する地元の市長、アラン・ジューヌ(Alain Jeune)氏は、「人が森の世話をしなければ、森は窒息してしまう」と主張する。

 ドロームの狩猟連盟のレミ・ギャンディ(Remi Gandy)会長も、再野生化によって釣りや狩りなどの伝統的な経済・娯楽活動が悪影響を受けると批判。理屈の上では賛成だが、としながら、数千ヘクタールの広さで計画を実施しなければ有意義な結果は生まれないだろうと主張している。

 ASPASによると、ローヌ(Rhone)川付近の別の保護区では、狩猟禁止の看板が壊され、地面の上に猟銃の弾薬筒と並べて置かれていたこともあったという。

 だが、再野生化の賛成派はひるまない。

 IPBESのエンリケ・ミゲル・ペレイラ(Henrique Miguel Pereira)氏は、「欧州の多くの人が、自然には人が必要、自然には管理が必要だと考えている」が、「それはおかしい。生物多様性は人類が誕生する以前にもあったし、人類が絶滅してもあるだろう」と主張する。

 クン氏は、自然に自由を与える必要性について簡潔に述べた。「私たちは神ではないのだ」 (c)AFP/Laure FILLON