■大きくなる課題

 中国社会科学院(Chinese Academy of Social Sciences)農村発展研究所の李国祥(Li Guoxiang)研究員はAFPに対し、「わが国の食料消費の全体構造の変革を支えるには、中国のリソースでは不十分だ」と話す。

 大量の食事は中国文化に根付いている。品数を増やすことで、客人やビジネスパートナーの歓心を買う狙いもある。

 一方で、生活水準の急上昇と共に食料消費量も急増した。政府の統計によると、中国ではかつてほとんど存在しなかった肥満も、2004〜14年で3倍以上に増えたという。

 中国における年間の食品廃棄量は、韓国ほどの人口規模の国全体の食料消費量に相当すると推定されている。

 現在展開されている食品ロス削減運動では、発言一つで数億人の国民を動かせる習氏の強大な力が改めて示された。個人崇拝の強まりとの見方もある。

 飲食店の利用者は注文量を減らすことが求められている。食べ放題の店の中には、客が料理を残した場合、事前支払いの預かり金から差し引くところもある。

 人々はまた、互いを監視し、通報するよう促されている。AFP記者は上海のある喫茶店で、ほとんど手をつけていないサンドイッチを残した客と、それを指摘した別の女性との間でいさかいになる様子を目撃したという。

■効果は限定的?

 ただ今回の運動も「人々が思うほどの効果はない」と指摘する声もある。農業コンサルティング会社のアナリストで、上海を拠点に活動するローザ・ワン(Rosa Wang)氏は、新型コロナウイルスの世界的大流行に伴い、移動制限や安全上の理由から、より経済的な自炊が優先されており、食料消費量は既に著しく減少しているとみている。

 また上述の李研究員も、長期的な施策として、耕地を開発から守ること、また農業継続を促すため農家の生活を向上させること、そのためにより積極的な手段を講じる必要があると提言している。(c)AFP/Dan Martin / LAN Lianchao