【8月26日 AFP】ロシアの野党勢力指導者アレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏(44)が何者かに毒を盛られたとみられ重体になっている問題で25日、欧米はロシアに調査を求める圧力を強めた。しかしロシア政府は、ナワリヌイ氏は薬物を摂取したことが示されたというドイツの医師団の発表を一蹴した。

 ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領批判の急先鋒(せんぽう)として知られるナワリヌイ氏は20日、空路で移動中にシベリア(Siberia)で意識不明となり、現在はドイツの首都ベルリンで治療を受けている。

 ベルリンのシャリテ大学病院(Charite University Hospital)の医師団は24日、検査の結果は「コリンエステラーゼ阻害薬に分類される薬物による中毒」を示していると表明した。

 コリンエステラーゼ阻害薬は、中枢神経系が正常に機能するために必要な酵素の働きを抑える薬剤で、神経ガスや治療薬、殺虫剤に使用されている。

 ナワリヌイ氏の支持者らは、同氏が首都モスクワに向けての離陸前に、シベリアの空港で飲んだ一杯の紅茶に毒が入っていたと主張。プーチン大統領の関与を疑っている。

 一方、ロシアのドミトリー・ぺスコフ(Dmitry Peskov)大統領報道官はプーチン氏の関与があったとする主張について、まともに取り合わない姿勢を示し、記者団に対し「そのような言い掛かりを真に受けることはできない。これらはまったくもって真実とはいえず、空騒ぎにすぎないとみられる」と語った。

 またぺスコフ氏は、ナワリヌイ氏が重体となった原因とされる毒物は特定されておらず、毒を摂取したと結論づけるには時期尚早だとしてドイツの医師団を批判した。

 米国のマイク・ポンペオ(Mike Pompeo)国務長官は25日、声明で「徹底的かつ透明性の高い調査(中略)と、関与した者たちに責任を取らせる」ことを求めると表明し、ナワリヌイ氏が毒を盛られたとみられる事態に「深い懸念」を表明した。

 欧州連合(EU)もロシアに対し、「独立した透明性の高い調査」を行うよう求めた。

 フランス外務省は25日、この「犯罪行為」について深い懸念を表明。責任を負うべき者たちが司法の裁きを受けるよう、「迅速かつ透明性の高い調査」の実施を促した。(c)AFP/Anna MALPAS