【8月25日 AFP】ロシアの野党勢力指導者アレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏(44)の治療を行っている病院は「コリンエステラーゼ阻害薬に分類される薬物による中毒症状」が認められると発表したが、同氏に使われたとみられる毒物について専門家らは24日、化学物質のグループに属している成分で、その仲間は殺虫剤から軍用の神経ガスまで多岐にわたると述べた。

 ドイツの首都ベルリンのシャリテ病院(Charite Hospital)でナワリヌイ氏の治療に当たっている専門家らは、「独立した研究所での複数回の臨床検査」によって、同氏に「コリンエステラーゼ阻害薬に分類される物質による中毒症状」が確認されたと発表した。ナワリヌイ氏に使用されたとみられる特定物質は「いまだ不明」で、現在、毒物を特定するための臨床検査を進めているという。

 コリンエステラーゼ阻害薬は、アルツハイマー病治療薬や特定の殺虫剤にも使用される薬剤の仲間だが、最も毒性の強い化学兵器「神経ガス」の仲間でもある。

 この物質には、サリンや神経剤VX、また2018年に英イングランド南部ソールズベリー(Salisbury)でロシア人元二重スパイのセルゲイ・スクリパリ(Sergei Skripal)氏とその娘ユリア(Yulia Skripal)さんの暗殺計画に使用された神経剤ノビチョクも含まれる。同事件では、事件現場の近くに住んでいた英国人女性が後に死亡した。

■呼吸に影響する筋肉にも作用

 コリンエステラーゼ阻害薬は、神経から筋肉にメッセージを伝達する酵素の働きを阻止し、それによって筋肉は「けいれんしたような状態になる」と、英リーズ大学(University of Leeds)で環境毒性学を教えるアラステア・ハイ(Alastair Hay)教授は説明する。

「すべての筋肉が影響を受けるが、最も重要なのは呼吸に影響する筋肉だ。呼吸が阻害されると、意識不明になる可能性もある。コリンエステラーゼ阻害薬による脳への直接的な影響もある」とハイ氏は述べた。