■神経系への長期的な影響

 深刻なケースでは、窒息または心不全を起こすこともある。十分な量を投与された場合は意識不明になるだろうとハイ氏は付け加えた。

 シャリテ病院は、ナワリヌイ氏に対して解毒剤アトロピンによる治療を行っていることを明らかにしている。

 アトロピンは筋肉の収縮を担う神経伝達物質アセチルコリンを阻害することで、毒物による症状を緩和する。神経ガスはアセチルコリンをつかさどる酵素を攻撃し、アセチルコリンの過剰生産と筋肉の機能不全を引き起こす。

 シャリテ病院は、ナワリヌイ氏の予後は今のところ不明で、「特に神経系に対し」長期的に影響が出る可能性は否定できないと述べた。

 スクリパリ氏とその娘の場合は、2018年に治療の結果、一命を取り留めた。

 ロシア大統領府(クレムリン、Kremlin)を批判する勢力に対しては、過去にも毒物を用いた悪名高い攻撃が複数発生している。

 ロシア連邦保安局(FSB)の元スパイ、アレクサンドル・リトビネンコ(Alexander Litvinenko)氏は2006年、英ロンドンで放射性ポロニウムが混入されたお茶を飲み、毒殺されている。ロシア政府は、事件の有力な容疑者、アンドレイ・ルゴボイ(Andrei Lugovoi)氏の英当局への身柄引き渡しを拒否。同氏は事件後に国会議員になった。(c)AFP