【8月25日 AFP】やっと再会できた愛猫を抱きしめて、若いレバノン人女性が安堵(あんど)の涙を流している。今月4日に大爆発に見舞われたレバノンの首都ベイルートでは、被害を受けた市民の多くが今、ペットの存在に慰めを見いだしている。

 首都をめちゃくちゃに破壊した大爆発では、ガラスやがれきが吹き飛び、170人以上が死亡、少なくとも6500人が負傷した。ペットたちもけがをし、多数が混乱の中で家を飛び出して行方不明となった。

 弁護士のヤンディ・スフェイル(Yandi Sfeir)さん(38)は、爆発で腕を6針縫うけがをした。病院から帰宅すると、飼い猫「ラッキー(Lucky)」の姿が見当たらなかった。7日後、ラッキーは餌も水もない地下3メートルの場所から、動物保護団体「アニマルズ・レバノン(Animals Lebanon)」のボランティアによって救出された。

「誰かがラッキーを見つけて、世話してくれていればと願っていた。再会できたときは本当にうれしくて…重しが取れた気分だった」とスフェイルさん。「今も、爆発直前の揺れを感じることがある。何かが起きるのではないかと、いつも心配だ」とAFPに語った。

 ラッキーと一緒なら「また自宅で眠れるはず」と話すスフェイルさんだが、そのラッキーもささやかな音で飛び上がるなど、以前と様子は変わってしまったという。

 アニマルズ・レバノンは、大爆発で行方不明になったペットたちを捜索し飼い主と再会させる活動を行っている。これまでに支援団体やボランティアらの努力で飼い主の元に戻ったペットは、100匹を超えるという。

 アニマルズ・レバノンのマギー・シャラーウィー(Maggie Shaarawi)副理事長は、「動物たちには、人を癒やす素晴らしい力がある。ペットが生きていたことを知った飼い主たちは、とても喜んで、まるで何もかもを失ったことすら忘れているようだ」と述べた。

 ただ、動物たちにも爆発のトラウマが深く刻まれている。たとえば、アニマルズ・レバノンが保護した白茶の猫「ドド(Dodo)」は、発見された際、ベランダから飛び降りて逃げようとした。「今も、餌を食べず、落ち着きがない」という。

 非常に多くの市民が、爆発で自宅を失った。そうした中で、ペットは「市民と自宅をつなぐ最後のよすが」となっていると、ペット捜索ボランティアのカマル・カティーブ(Kamal Khatib)さんは語った。

 映像序盤はペットと再会できた市民ら。アニマルズ・レバノンが8月撮影・提供。中盤は飼い猫「ラッキー」と再会できたスフェイルさん、13日撮影。終盤はアニマルズ・レバノンの活動の様子、13日撮影。(c)AFP/Oumeima Nechi and Susannah Walden