【8月29日 AFP】新型コロナウイルスの影響で自転車ロードレースの2020年シーズンが短縮される中、29日に開幕する今年のツール・ド・フランス(2020 Tour de France)は非常に激しく、予測困難な戦いになることが必至だ。ここでは、AFPが注目する今大会の優勝候補6人を紹介する。

■プリモシュ・ログリッチ/チーム・ユンボ・ビスマ

 元スキージャンパーの肩書を持つチーム・ユンボ・ビスマ(Team Jumbo Visma)のリーダー、プリモシュ・ログリッチ(Primoz Roglic、スロベニア)は、他の優勝候補をフィジカルの強さで上回っているように見える。

 孤立した場合のパフォーマンスには不安があり、昨年のジロ・デ・イタリア(Giro d'Italia 2019)でのようにあっさりと出し抜かれる可能性もあるが、同年のブエルタ・ア・エスパーニャ(Vuelta a Espana 2019)は見事優勝。イネオス・グレナディアーズ(Ineos Grenadiers)は、ログリッチを消耗させて3週目には脱落させる作戦に出るとみられる。

■エガン・ベルナル/イネオス・グレナディアーズ

 前回大会の総合覇者であるエガン・ベルナル(Egan Bernal、コロンビア)は、まだ23歳ながらイネオスのエースであり、他チームからマークされる存在でもある。

 唯一の弱点は、今大会は第20ステージに組み込まれているタイムトライアルだが、山がちなコースは彼の最も得意とするところ。ここ8年で7回総合優勝者を出しているチームで、クリス・フルーム(Chris Froome、英国)とゲラント・トーマス(Geraint Thomas、英国)がメンバー外になる中、ベルナルはスペイン語が話せるチームメート3人らと共に連覇を目指す。

■トム・デュムラン/チーム・ユンボ・ビスマ

 2018年のツールとジロ、さらにはUCIロード世界選手権大会(2018 UCI Road World Championships)のタイムトライアルで2位となったトム・デュムラン(Tom Dumoulin、オランダ)は、そうした悔しい経験が続いたこともあって、今年はオランダ勢中心の強力な陣容を築いているチーム・ユンボ・ビスマへ移籍し、ログリッチに次ぐ第2の脅威を担う。

 医学部出身で、情報収集能力にも長けた29歳は、3週間のレース運びを巧みに計算できる選手でもある。最終日前日のタイムトライアルがラプランシュデベルフィーユ(La Planche des Belles Filles)フィニッシュなのは、デュムランにはおあつらえ向きのコースだろう。

■ティボー・ピノ/グルパマFDJ

 ツールでは、ベルナール・イノー(Bernard Hinault)が5度目の総合優勝を果たした1985年を最後に、地元フランスからチャンピオンが生まれていない。

 グルパマ・FDJ(Groupama-FDJ)のティボー・ピノ(Thibaut Pinot、フランス)は、前回大会は序盤優勢にレースを進めていたように見えたが、激しい横風が集団を分断する中でイネオス勢に捕まった。その後は山岳ステージを一つ勝利して大胆にやり返した日もあったが、最後は負傷リタイアを強いられた。

 今回もフランスメディアの大きな注目を集める中、彼の強みを引き出すために用意されたかのようなコースに挑む。

■リチャル・カラパス/イネオス・グレナディアーズ

 昨年のジロを制したリチャル・カラパス(Richard Carapaz、エクアドル)は、ぎりぎりでイネオスのメンバーに入った。同選手の起用は、チーム代表のデイブ・ブレイルスフォード(Dave Brailsford)氏による、新たな戦術的采配の的中となるかもしれない。

 2018年のトーマスと昨年のベルナルは、ともにグランデパール(開幕地)ではブレイルスフォード氏の「プランB」であったものの、仏パリのシャンゼリゼ(Champs-Elysees)通りを走行する最終日には、表彰台の頂点に上り詰めた。

■ナイロ・キンタナ/アルケア・サムシック

 かつてフルームの直近のライバルと目されていたナイロ・キンタナ(Nairo Quintana、コロンビア)は、スペインのモビスター・チーム(Movistar Team)を離れ、現在はフランスのアルケア・サムシック(Arkea-Samsic)に所属する。

 調子も士気も急上昇した様子で快走していた中、7月にトレーニング中の事故に遭遇してしまったが、勝負の行方が予測不可能な2020年のツールでは主役になる可能性がある。

 キンタナは、これまでにブエルタとジロで総合優勝を経験。ツールでは新人賞2回と総合2位を2回、さらには山岳賞を獲得している。(c)AFP