【9月12日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)に対するドイツの救済策は、その充実した内容から国内外で称賛を集めた。しかし、離婚してケータリング業を営むルル・ポトチュニク(Lulu Pototschnik)さん(51)にとっては、手が届きそうで届かない支援でしかなかった。こうした「制度の隙間」で苦しむシングルマザーは他にも多数存在している。

 AFPの取材に応じたポトチュニクさんは、「娘と私はいつもなんとかやってきた。でも今回は、まるで取り残されてしまったかのようで、一日一日みじめさが増すような思い」と語る。

 ポトチュニクさんはコンサートやフェスティバルの舞台裏でケータリングサービスを提供する小さな会社を10年以上続けてきた。しかし今年3月、新型コロナウイルスの波はドイツにも押し寄せ、年内の予約はすべてキャンセルされてしまった。

 そこで、政府が支給する「緊急支援策」に申請した。すると、銀行口座にはすぐに9000ユーロ(約110万円)が振り込まれた。しかしそれは何の役にも立たなかった。

 この支援制度の規則では、支給された現金は事業の固定費に充てることが条件とされているが、ポトチュニクさんのビジネスには固定費はほとんど存在しないのだ。

「使うことが許されないお金に何の意味があるのでしょう?」

 この難しい時期を共に乗り切るパートナーもおらず、ポトチュニクさんは月2200ユーロ(約28万円)ほどの生活費を捻出するために貯金を切り崩している。これには、健康保険料や21歳の娘と暮らす西部エッセン(Essen)の自宅家賃も含まれる。

 ドイツ北部グリュックシュタット(Glueckstadt)に住むシングルマザーのパトリシア・シェーンフェルト(Patricia Schoenfeld)さん(47)も同様に厳しい状況に置かれている。

 シェーンフェルトさんは今年、夫との別居後に仕事に復帰したばかりで、まだ会社では購買部門のカテゴリーマネジャーとして試用期間中だった。その直後にパンデミックによって学校が閉鎖され、7歳の娘が自宅待機を余儀なくされた。

 フルタイムで子育てをしながら同時に仕事に当たった。しかし、多くの電話会議をこなすのは「極めて困難」だったと訴えるシェーンフェルトさんは4月、再び解雇された。