【8月23日 Xinhua News】中国新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)バインゴリン・モンゴル自治州(Bayingolin Mongol Autonomous Prefecture)チャルクリク県(Ruoqiang)のチャルクリク県文博館で、2点の壁画の複製品が注目を集めている。いずれも男性の半身が描かれており、目を見張り、口を軽く結び、頭にまげを結い、頭からかぶる丸首のシャツを着ている。中でも背中に描かれた一対の翼が人々の目を引く。

 壁画は「翼をもつ天使像」と呼ばれる。現物は同県の中心市街地から70キロ東にあるミーラン(米蘭)遺跡の仏教寺院跡で見つかった。20世紀初頭に同遺跡を発掘したオーレル・スタイン(英国)は、大量の文書や彫像、壁画、日用品などを発見し、海外へ持ち出した。「翼をもつ天使像」もその中に含まれていた。

 スタインは壁画について、キリスト教の彫像から影響を受けていると考え、ギリシャ神話の恋愛の神エロスが元になっているとの説を立てた。

 スタインの見解には異議を唱える学者も少なくなく、壁画に描かれた人物が何者なのかは現在に至るまで定説がない。ただ、これらの神秘的な仏教壁画が、新疆でかつて栄えた仏教文化を反映していることは否定できない。

 紀元前4世紀以前、新疆地域では原始宗教が普及していたが、紀元前1世紀頃に仏教が伝わり、4世紀から10世紀に全盛期を迎えた。 

 考古学者によると「翼をもつ天使像」があったミーランの仏教寺院が建立されたのは2~3世紀で、当時の楼蘭王国(後に鄯善と改称)の伊循城を基礎に発展した。紀元前77年に前漢が伊循城で屯田を開くと、寺院は屯田と都市の経済力を後ろ盾とし、急速に仏教文化の中心へと発展していった。

「翼をもつ天使像」が持ち去られた後も、ミーランの寺院や仏塔などの遺跡は風雨の浸食を受け続けた。新中国が成立すると、政府は遺跡の修復と補強を実施。全国重点文物保護単位(国宝・重要文化財に相当)に指定し、文化財保護管理所を設置して専門スタッフを常駐させた。

 新疆ウイグル自治区では、交通建設が急速に進んだことにより、ますます多くの人が車や列車、飛行機で気楽にシルクロードの旅を楽しめるようになった。チャルクリク県政府も観光サービスインフラの整備を計画しており、大切に保護してきたこれらの文化財を人々に公開、展示していくとしている。(c)Xinhua News/AFPBB News