【8月22日 AFP】中国中部・湖南(Hunan)省でタケネズミを繁殖する仕事に就いているリウ・イェンチュン(Liu Yanqun)さんが、ちょうど多くの利益を手にし始めた昨年末、新型コロナウイルス感染症が広がり始めた。

 次々に死者を出している新型ウイルスは、中国における野生動物の売買と関連付けられている。科学者らが、新型ウイルスはコウモリに由来し、他の哺乳類を介して人間に感染するおそれがあると指摘したためだ。

 これを受けて、中国当局は、タケネズミ、コブラ、ハクビシンなど郷土料理に使われるさまざまな動物の売買と消費を全国的に禁止した。

 中国国営メディアが先週報じたところによると、中国当局がエキゾチックアニマル(飼育が珍しい動物)の繁殖業者を規制対象にしたことで、約110億元(約1600億円)相当の動物が販売できなくなり、25万近い人々の仕事に影響が出た。

 ネズミ約800匹を繁殖させていたリウさんは、ほそぼそと営んできた事業が立ち行かなくなり、「精神的に参ってしまいそうだった……別の仕事を見つけるのは難しい」「これから何をすればいいか、はっきりとした計画はない」と嘆く。

 規制処分を受けた事業への政府からの補償額は、投資額には程遠く、繁殖業者らはAFPに対し、新しい仕事を始める資金はほとんどなく、負債の返済に必死だと語った。

 別のタケネズミ繁殖業者の男性(47)は、「昨年は事業規模を拡大する計画を立てていた……しかし、新型ウイルスの感染拡大は、私たちにとっては非常に大きな痛手だ」という。

「心の中では泣いている」というこの業者は、今はウサギとニワトリを飼育している。

 中国の農村部では、新型ウイルスによって経済が停滞する前から、5000万人以上が貧困状態にあった。政府は年間2300元(約3万5000円)未満での生活を貧困と定義している。

 湖南省の業者は、「今年は(新型ウイルスの)流行によって、私たちはまた貧困に逆戻りしつつある。しかも、以前よりもひどい状態にだ」と語った。(c)AFP / Beiyi SEOW