【8月27日 AFP】新型コロナウイルスの影響で、タイを含め世界経済は打撃を受けている。だが、ヨートさんは、自分へのご褒美に87万2000ドル(約9300万円)するライムグリーンのランボルギーニ(Lamborghini)を買った。

 首都バンコクの石油化学会社で働くヨートさんことタナゴン・マハーノンタリット(Thanakorn Mahanontharit)さんが購入したのは、特別仕様の「ウラカンEVO(Huracan EVO)」だ。

 タイ経済が新型コロナ危機でずたずたになっても、バンコクの億万長者らを対象としたラグジュアリー市場は無傷だ。

 観光業と輸出の急落で、タイの経済成長率は10%減となり、数百万人が失業する可能性がある。しかし、タイでは経済が二極化しており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による経済危機に「免疫」がある層がいる。

 上海の経済誌「胡潤百富(Hurun Report)」が発表した世界の億万長者番付によると、タイは世界で9番目に億万長者が多い。

 ヨートさんもその一人だ。スーパーカーに課される輸入税は80%にも上るが、ヨートさんは3月に、迷うことなくランボルギーニを購入した。ヨートさんは「これは成功の証しで、私が優れているというわけではない」と語る。「よく働いて、よく遊んでいるだけだ」

 フェラーリ(Ferrari)、ロールス・ロイス(Rolls-Royce)、ランボルギーニの3社は、新型コロナによるパンデミック(世界的な大流行)のさなか、75万~120万ドル(約8000万~1億3000万円)の値がついた最上位モデルを売り出した。

 バンコクと周辺の富裕層の需要に賭けたのだ。

■経済格差の大きい国

 タイはアジアで経済格差が大きい国の一つだ。王室を頂点に、一握りの富豪一族がビールや免税店、コンビニに至るまであらゆる分野を独占している。

 6年間に及ぶ親軍政権が政府の主要事業で便宜を図ったため、富豪らの財産はこの間、著しく増加したが経済全体は落ち込んでいる。