■子どもたちのために

 アルベール2世による認知は「自分の人生を間違いなく変えた」とボエルさんは言う。

「何よりもまず、自分がより真剣に受け止められるようになったと感じること。自分の話に耳を傾けてもらえるようにもなった。これはとても大きい」

「そして、ベルギーの司法がとても健全であることも分かった」

 裁判所がアルベール2世にDNA検査を命じ、それを拒否すると1日当たり5000ユーロ(約60万円)の罰金を科して初めて、前国王はその態度を変化させた。

 1999年にあるジャーナリストが、当時国王だったアルベール2世とセリス・ロンシャン女性男爵との約20年に及ぶ不倫関係でできた子どもの存在を暴露したが、アルベール2世は父親ではないと否定し続けた。アルベール2世は、子ども時代のボエルさんと接触していたにもかかわらず、これを決して事実と認めなかったのだ。

 ボエルさんは自身のアイデンティティーのために立ち上がり闘ったことを誇りに思っている。それは同時に、16歳と12歳の子どもたちのためでもあった。

「子どもたちは学校で、『母親はうそをついているだろう、頭は大丈夫なのか⁉』などと言われていた」

 しかし、「誰ももうそのようなことをあの子たち向かって言うことはできない。それがとてもうれしい」と述べた。

 そして同じような境遇にある人たちが「自分は誰なのか、自分のアイデンティティーは何なのか」と模索するうえで、自身の経験が励みになることを願うとボエルさんは話した。(c)AFP/Marc BURLEIGH and Matthieu DEMEESTERE