【8月27日 AFP】雨にも雪にも猛暑にも負けずに配達を続ける米郵政公社(US Postal Service)が、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領という新たな敵に直面している。

 11月3日に行われる今年の米大統領選は、新型コロナウイルス流行の影響で、数百万人の有権者が郵便投票を行うと予想されている。だが、郵政改革を進めるトランプ氏は、スリム化による配達遅延も意に介さず、郵政公社に対しかつてない激しい攻撃を仕掛けており、新型コロナ関連景気刺激策の一つとして財政難の郵政公社に資金注入する支援法案にも反対している。

 トランプ氏は13日、米FOXニュース(Fox News)に対し「郵政公社は、何百万もの郵便投票を扱うために郵便局を動かすには、その金が必要だという」「だが、その金がなければ、誰もが郵便投票するのは不可能だという」と批判した。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)により、いくつかの州では郵便投票の選択肢を拡大しており、今秋には全米の有権者の約4分の3が自宅から郵便投票ができるようになる見込みだ。

 共和党のトランプ氏は15日、郵便投票が増えれば「大惨事」となると批判したが、専門家の多くはトランプ氏の主張に異議を唱えている。

 民主党が多数を占める米下院は22日、郵政公社に250億ドル(約2兆6000億円)を支援する法案を可決した。民主党のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)下院議長は法案審議の前に「郵便事業を救う」ための審議だと述べていた。だが共和党が多数を占める上院では、同法案は否決される見通しだ。

 ペロシ氏やチャック・シューマー(Chuck Schumer)上院院内総務ら民主党議員は、トランプ氏が郵政公社総裁に最近指名したルイス・デジョイ(Louis DeJoy)氏について、「トランプ氏の大口献金者であり、事業方針の全面改革に着手することで郵便配達の水準を低下させ、大統領選における不正の共犯者の役目を果たしている」と糾弾している。

 郵便事業に対するトランプ氏の批判的な立場は長らく知られているが、ここへ来て、大統領選に関するほとんどの世論調査で民主党のジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領に後れを取る中、トランプ氏はとりわけ郵政公社を攻撃している。

 だが、郵政公社広報のデービッド・パーテンハイマー(David Partenheimer)氏はAFPに対し「われわれは郵便投票やその他の配達を遅らせるつもりはない」と説明。「郵便取扱量の大幅な減少とビジネスモデルの破綻により、郵政公社は財政的に持続不可能な状況にある」と述べ、郵政改革の理由は財政状況の悪化だと強調する。