【8月24日 AFP】「一番恋しいのは、息子にキスをする時の匂いと、妻の体の匂いだ」と、ジャンミシェル・メヤール(Jean-Michel Maillard)さんは話す。

 嗅覚が失われる無嗅覚症についてメヤールさんは、目に見えない障害の一つで、それを受け入れて生活するのが心理的に難しく、対処するための治療法もないと話す。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復し、その後の生活で無嗅覚症に苦しむ人の数はますます増えている。中には長期に及ぶとみられる嗅覚能力の喪失に直面している人もいる。

「無嗅覚症は患者から日常生活の匂いを取り上げる。これはひどい苦痛だ」と、フランスの患者支援団体「anosmie.org」代表でもあるメヤールさんは指摘する。

 嗅覚を失って初めてそれを本当に意識するようになる──そう話すメヤールさん自身も事故で嗅覚を失った。

 仏パリにあるフォンダシオン・ロートシルト病院(Hopital-Fondation Rothschild)の耳鼻咽喉科専門医アラン・コーレ(Alain Corre)氏によると、「食べる」ということも全く異なるものになるという。食べ物の味わいは嗅覚で感じられる部分が大半を占めるからだ。

 無嗅覚症の原因についてコーレ氏は、鼻ポリープ、慢性鼻炎、糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病など、さまざまが原因が挙げられると指摘する。そして今回、新型コロナウイルス感染症がこれに加わった。

「人々が嗅覚を失って取り戻せない場合、生活の質(QOL)と気持ちの落ち込みに決して小さくない影響が認められるようになる」と、コーレ氏は話し、問題となるのはこの状態が続く場合だと続けた。

「この問題には心理的に影響を及ぼす側面があり、それを放置したまま生活を続けるのは非常に難しい」

「誰かに助けを求めるべき状況だ」