■治療法を求めて

 この疾患に対する特定の治療法は存在しない。

 コーレ氏によれば、嗅覚障害の原因に対処する必要があるが、「新型コロナウイルスに関連する無嗅覚症の問題は、ウイルス感染の治療が患者の嗅覚には効果がないことが多い点だ」という。

「(流行)初期の数字によると、新型コロナウイルス感染症患者の80%前後は1か月足らずで自然に回復する。8~10日で回復するケースも少なくない」

 だが残りの20%については、においを感知する嗅覚神経細胞がCOVID-19によってダメージを受けてしまっている恐れがある。唯一の救いは、鼻の奥にある嗅覚神経細胞が再生可能なことだ。

■「嗅覚神経の再教育」

 パリにある2つの病院、ロートシルト病院とラリボワジエール(Lariboisiere)病院は、この現象の調査計画「CovidORL」を立ち上げ、さまざまな方法による鼻洗浄が無嗅覚の症状をどの程度治すことができるかを調べている。

 そのうちの一つにコルチゾン(Cortisone)を用いた治療がある。コルチゾンについては、感冒後の無嗅覚症例の治療に効果があることが判明しており、一部に希望をもたらしていると、コーレ氏は述べている。

 無嗅覚症に対処するもう一つの方法として、嗅覚神経の再教育を通じた方法がある。再教育の目的は、記憶に残る特定のにおいが持つ「関連性の活性化」を試みることだ。

 コーレ氏のお勧めは、自宅の台所でかいだことがある、自分にとって特別で大好きな匂い──例えばシナモンやタイムなどの匂いを五つ選ぶことだ。この匂いを1日2回、実物を見ながら5~10分間吸引するのだという。

 anosmie.org代表のメヤールさんは、4種の匂いを用いた自身の再教育プログラムを昨冬に終了した。

 メヤールさんは今、魚、たばこ、バラの精油などを含む「10種の匂いを感じる」ことができるようになったという。そして、「香りを感じられる香水も見つけた」とうれしそうに話した。(c)AFP/Laurence COUSTAL