いま着けたいのは、“物語” のある時計--。その興味深いストーリーを知るほどに魅力は深まるばかり。ここに現代の名品たちを主役にした珠玉の短編集を編んでみた。

レイダー・シースカイ/マッシブなクッション型ケースや特殊形状の指針、反転カラーの文字盤など、1970年代に人気を博した「シースカイ」のディテールをモダナイズ。外観はレトロだが、アルミニウム製の逆回転防止ベゼルや両面無反射加工のサファイアクリスタル風防、耐久性の高いレザーストラップなど、最新素材でスペックアップされている。自動巻き。ステンレススティール、ケース直径44㎜、200m防水。税別43万5000円。

スイス時計産業の聖地、ル・ロックルで創業。20世紀初頭にかけては様々な懐中時計で人気を博した。

ジャガー・ルクルトと提携していた1973年当時の広告。GMT機構を備えた「シースカイ GMT」が掲載され、バリエーションも展開していたことがわかる。

FAVRE-LEUBA

“物語” が時の流れのなかで生まれ、育まれるものなら、1737年に創業した “世界で2番目に古い時計ブランド”、ファーブル・ルーバはその宝庫とも言えるだろう。「レイダー・シースカイ」は連綿と続く同社の歴史と、その本質を体現する名作だ。このモデルのルーツは、1960年代に同社が威信をかけて取り組んだ一連のエクストリームモデルの開発・拡充の集大成とも呼べるダイバーズ、「シースカイ」。
同社は1960年に初のダイバーズを発表した後、高度計や水深計付きのモデルなどを矢継ぎ早に発表し、冒険家やアスリートの御用達に。人気絶頂の頃、1969年に発表されたシースカイは70年代にも後継機種が作られ、看板的存在となったものの、折しも世界はクオーツショックの真っ只中。騒乱の煽りでやがて姿を消し、一時代を築いた同社のダ イバーズの系譜は途切れたかに見えた。

だが2016年、新体制の下で次世代を担う「レイダーコレクション」として蘇ったのだ。屈強なクッションケースや14角のベゼル、視認性の高い文字盤など往時の意匠を最新技術で踏襲。生半可な復刻ではないところがイイ。新色イエローのモダンな華やぎが、老舗の新章を象徴する。

文=川口哲郎 写真=近藤正一
(ENGINE2020年9・10月合併号)