いま着けたいのは、“物語” のある時計--。その興味深いストーリーを知るほどに魅力は深まるばかり。ここに現代の名品たちを主役にした珠玉の短編集を編んでみた。

BR 03-92 ブラック マット/当初、ステンレススティール製ケースを採用していた「BR 03」だが、2014年にはケース素材をセラミックに変更し、耐久性や装着感を向上。これに合わせてケース構造を2ピースから3ピースへと変え、またベゼルや針などのディテールを見直したことで、デザインもブラッシュアップされている。自動巻き。ブラック マット セラミック、ケースサイズ42㎜、100m防水。税別43万5000円。

ケース構造は展開図からも3ピースであることがわかる。ミドルケースをベゼルと一体化したプレート(ダイアル側)とケースバックのプレートで挟み、ビスで固定している。

「BR 01」や「BR 03」のデザインモチーフとなったのは航空計器。写真の最上段中央には「BR 01」や「BR 03」を想起させるベル&ロス銘のコックピットクロックが違和感なく収まっており、このモデルがいかに航空計器を研究してデザインされているかがよく分かる。

BELL & ROSS

「BR 03」は、2005年に誕生した「BR 01」のケースサイズを42㎜にスケールダウンして、2006年に登場したモデル。スクエアケースにラウンドのベゼルを組み合わせたデザインは、今やベル&ロスのアイコンであり、同社の「インストゥルメント」シリーズにカテゴライズされている事実が示すとおり、航空計器に着想を得たものだ。

遡ること1994年に創業したベル&ロスが初のオリジナルモデル「ヴィンテージ 123」を発表し、本格始動したのは 1997年のこと。往時のミリタリーウォッチを想起させるルックスは、共同創業者のふたり、カルロス・A・ロシロとブルーノ・ベラミッシュがミリタリーウォッチに魅了されていたことから生まれたもので、このモデルはすぐさま人気を獲得する。

しかし、ベル&ロスはさらに独創的な時計を目指し、その結果完成したのが、軍用コックピットクロックをモチーフとした「BR 01」と「BR 03」というわけだ。現在「BR 03」はアイコニックなデザインはそのままに、多くのバ リエーションを展開しているが、なかでも航空計器の本質を取り入れるベル&ロスのクリエイティビティがダイレクトに伝わってくるのは「BR 03-92 ブラック マット」だろう。

文=竹石祐三 写真=近藤正一
(ENGINE2020年9・10月合併号)