いま着けたいのは、“物語” のある時計--。その興味深いストーリーを知るほどに魅力は深まるばかり。ここに現代の名品たちを主役にした珠玉の短編集を編んでみた。

リマスター01 オーデマ ピゲ クロノグラフ/CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ クロノグラフの自社キャリバー4401をノンデイト化し搭載。1533の36㎜から大径化したが、極限までベゼル幅を詰めた凝縮感はマニア心をくすぐる。アールデコの数字インデックスや当時のブランドロゴを再現し、リュウズにはロゴを入れないなど細部もかつてのスタイルで徹底している。自動巻き。ケース直径40㎜、ステンレススティール×ピンクゴールド。税別555万円。

1533は当時としては先進的な12時間積算を備えていた。30分積算に4/5の表記があるのは、サッカー好き の創業家三代目がハーフタイムを知るためにリクエストしたもので、これは新作にも受け継がれている。

AUDEMARS PIGUET

昨年秋、東京でオーデマ ピゲの大々的なエキシビションが開催された。名作アーカイブから新作まで150本以上が一堂に並んだスケールと内容もさることながら、アートとコラボした体験型の展示は従来の概念を超えるものだった。〈時計以上の何か〉。そう名づけられたイベント名がそのままブランドの印象として強く残ったのだ。

来日したベナミアスCEOにそう話すと、わが意を得たりとニヤリ。「来年にはミュージアムをオープンし、それに合わせて新作を出すよ」と言ったのだった。その言葉通り、今年ミュゼ アトリエというミュージアムを本社に開設し、これを記念し、500本の限定モデルを発表した。それが「リマスター01」だ。範としたのは1943年にわずか3本しか作られなかったクロノグラフの1533であり、コンビカラーのケース やティアドロップ型のラグといった古典的な意匠はそれに倣う。

だがこれをただの復刻と捉えるのは早計だ。そこには過去と現代をつなぎ、未来を創るという強い意思が窺える。新しいミュージアムがアトリエを中心に据え、歴史の中から次なる時計を生み出すことを意図したのと同様に、リマスターのネーミングは音楽や映画のリマスタリングからイメージしたという。01ではけっして終わらない。

文=柴田 充
(ENGINE2020年9・10月合併号)