いま着けたいのは、“物語” のある時計--。その興味深いストーリーを知るほどに魅力は深まるばかり。ここに現代の名品たちを主役にした珠玉の短編集を編んでみた。

プロジェクト Z14/ハリー・ウィンストンの象徴的な技術となったレトログラード秒針を持つ最新作。歴代のプロジェクト Zに比べてシンプルな機構を持つが、その分、ダイアル側から地板を覗かせるスケルトナイズの巧みさや、幾何学的な雰囲気のインダイアルやアーチの重なりが際立って見える。本作から加え られたベゼルのファセットも特徴的だ。自動巻き。ザリウム、ケース直径42.2㎜、10気圧防水。世界限定300本。税別270万円。9月発売予定。
最新モデルへと連なる「プロジェクト Z」の系譜。ケースに特殊合金のザリウムを用いたリミテッドエディションが先行発表され、同様のデザインと機構を盛り込んでケースのみゴールド製に改めた「HW オーシャン」コレクションが追加発表されることが通例。ジルコニア基のザリウムは、軽量で耐蝕性、耐酸性に富み、低アレルギーの素材としても知られる。

HARRY WINSTON

今や伝統的な時計ブランド以上に、ハイスペックな時計を手掛けるようになった非時計専業ブランド。その先駆けとなったのが屈指のハイジュエラーとして名を馳せてきたハリー・ウィンストンだ。1989年から本格的な時計作りを始めた同社は、その初作にレトログラード式の永久カレンダーを盛り込んだ。ジュエラーである同ブランドが、初作にしてこのような複雑時計を発表したことは、時計業界に激震を与えた。

そしてその完成度の高さとアイコニックなデザインとが相まって、ハリー・ウィンストンの名は高級時計の世界にも轟くことになった。そんな同社の先進性を象徴するシリーズが、2004年から連作されている「プロジェクト Z」だ。超軽量かつ耐蝕性に優れる特殊合金ザリウムをケースに用いつつ、多層的なダイアルレイアウトを積極的に採用。アーキテクチュアルなその表現は、今や同社のタイムピースを象徴する魅力のひとつとなっている。

NY5番街にある本店のエントランスを想起させるリュウズガードのデザインも秀逸だ。近年ではプロジェクト Zで試みられたデザインと機構が、翌年以降の「HW オーシャン」にも盛り込まれるため、目が離せないシリーズとなっている。

文=鈴木裕之
(ENGINE2020年9・10月合併号)