【8月18日 東方新報】中国自動車市場で、国産の自主ブランドが苦戦している。外国企業との合資ブランドが市場を圧倒するなか、生存のがけっぷちに立たされている中国自主ブランド自動車企業も。起死回生の道はあるのか。

 6月、中国の自主ブランド乗用車の市場シェアは2009年以来最低となった。5月から0.6ポイント下落し、前年同期比で0.5ポイント下落した。上半期の中国ブランド乗用車の売り上げは前年同期比29%減。市場占有率は36.3%だ。一方ドイツ系車、日系車の売り上げは急増中で、それぞれ25%、23.7%に拡大している。

 自主ブランド車のシェアが低下している原因は、この2〜5月の国内自動車消費が新型コロナで抑制されたあと、4月に自動車販売が再開されたとき、購買者層が新型コロナの影響の比較的少ない、比較的裕福なミドル‐ハイエンド層が中心となったことがある。この結果、合資企業の高級車ブランドの売り上げ回復が比較的早く、自主ブランド車の市場シェアが抑えられてしまった。さらにもっと深層の原因としては、自主ブランドが伝統的に優勢な領域-SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビーグル)と新エネルギー自動車の市場の人気が徐々に下がってきて、低価格帯乗用車市場が縮小していることがある。また、合資ブランドも、自主ブランド市場シェアを奪うべく、低価格化を研究し続けている。

 データによれば、販売価格30万元(約460万円)以上のモデルの市場シェアは、2017年の4.7%から2020年上半期には9.8%に上昇したが、この価格帯は、高級ブランド車に占められている。16万〜25万元(約245万円〜383万円)モデルのシェアは15%から20%に、12万〜16万元(約184万円〜245万円)モデルは11%から16%に上昇しているが、これら価格帯は合資ブランド車の主戦場だ。

 自主ブランド車が狙うのは8万〜12万元(約123万円〜184万円)、あるいは8万元以下の価格帯だが、これらの市場おけるシェアは、それぞれ34%、16%に減少した。合資ブランドが低価格化に向かっている一方で、一部の自主ブランド価格は上昇しており、自主ブランド新車の平均価格は2017年の8万元から2020年には9.3万元(約143万円)に上昇している。価格の優位性を失った自主ブランドは、すべてのセグメントで敗退した、といえる。

 2020年上半期の中国自動車市場を見わたすと、自主ブランド車の分化が進み、自主ブランドの乗用車販売数トップ10企業のうち長安汽車(Changan Automobile)と第一汽車集団(FAW Group)だけがプラス成長を維持しており、他のブランドは20%以上下落し、最大下落率は6割を超えている。

 6月に入ると、自主ブランド三強と呼ばれる吉利汽車(Geely Automobile)、長安、長城汽車(Great Wall Motor)は底を打って前年比上昇に転じた。吉利は6月に10.6万台を販売し前年同期比25.3%増、市場シェアは6%以上、長安は29.3%増の8.1万台、万里の長城は前年同期比29.6%増の8.2万台を販売した。 ダークホースの一汽紅旗は1〜6月の販売累計は7万台を突破し、前年同期比111%となった。

 しかし、こうしたプラス成長自主ブランド企業はほんの一部であり、全体として、自主ブランド車の衰退は明らかだ。6月の比亜迪汽車(BYD)の販売台数は前年同期比12.9%減の3.37万台、上海汽車集団(SAIC)の乗用車は3.5%減の4.8万台、広州汽車集団(Guangzhou Automobile Group)の乗用車の6月の販売台数はわずか2.66万台で前年同期比39.74%減、北京汽車集団(BAIC Group)ブランドの乗用車は1〜6月の累計販売台数がわずか7.3万台で前年同期比67.1%減。

 もはや存続の危機といっていい崖っぷちメーカーも多い。上半期の売り上げが50%減の自主ブランド企業は30社を数え、新型コロナウイルスの影響下で、自主ブランド内での両極分化と淘汰プロセスが加速している。

 ここで自主ブランド車がわずかな希望を見いだせるのが、新エネルギー車分野だろう。テスラと競う中国自主ブランド電気自動車(EV)メーカーの上海蔚来汽車(NIO)はハイエンド車に切り込み、最初のモデルのES8を40万元(約614万円)以上の価格で直接販売している。これは伝統的自主ブランド車としては、完全に想像を超えている。2017年に設立された広汽新能源も、鉄壁のテスラ(Tesla)に挑むハイエンド車を出している。新エネルギー車分野では、自主ブランドは産業チェーンとサプライチェーン双方に利点と巨大な顧客需要を有しており、これは新たなチャンスといえる。

 中国の自動車市場は、魏建軍(Wei Jianjun)会長が率いる長城、李書福(Li Shufu)会長が率いる吉利、王伝福(Wang Chuanfu)会長が率いるBYDの三社が中国民営自動車企業で最もパワーがあり、自主ブランド車の未来に比較的大きな影響を与えている。ハイエンド市場に切り込み、変革とアップグレードを行うことが、この3社にとって2020年下半期以降の競争のための共通の選択といえるだろう。自主ブランド車のシェアが果たしていつ40%に回復するか今のところ定かでないが、こうしたトップ企業が次の一歩をいかに切り開くかがカギといえそうだ。 (c)東方新報/AFPBB News